| 2012年08月01日(水) |
(SS)運命よりは因果 |
どうして進藤はぼくなんかが好きなんだろう?
「だったらおまえはどうしておれじゃなきゃダメなんだよ」
尋ねてみたら実に鮮やかに切り返されて、ぼくは何も言えずに口を閉ざした。
「好きに理由なんか無いだろ。好きだから好き、それでいいじゃん」 「それは確かにそうだけど…」
それでも時々不思議に思う。
どうして彼はぼくを好きになり、ぼくは彼がいなければ生きていけないと思うようになったのか。
「もし、出会わなかったらどうなっていたのかな?」 「無いよ」 「え?」 「おまえに出会わないなんて、そんなの無い。もし仮に出会わなかったとしたら、おれはおれじゃないし、おまえはおまえじゃ無いと思う」
きっぱりと言われて面食らった。
つまり出会うことは必然で、出会わなければ存在すらしないと、そういうことか。
「…大袈裟だな」
それ程までに強い結びつきだと言われたことが照れ臭くて、はぐらかすように言いかけたら即座にそれを打ち消された。
「大袈裟じゃないよ、事実だよ」
普段へらへらしているくせに、進藤はこういう時、やたらと男前になる。
「おまえだってそう思うだろ?」
にこりともせず、真顔で突きつけるようにそう言われ、ぼくは結局はぐらかすことも茶化すことも出来ず、顔を真っ赤に染めながら再び口を閉ざすはめになったのだった。
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