「鳥にはね、強姦は絶対有り得ないんだって」
思い出したようにふとアキラが言った。
「は? おまえ何いきなり凄いこと言ってんの?」 「いや、鳥って交尾する時の体勢がものすごくバランス悪いだろう? だから雌の協力が無いと交尾することは出来ないってこの間読んだ本に書いてあったんだ」 「ふうん」
受け入れて迎え入れる体勢を雌が作ってくれないと、雄は上に乗ることも出来ないという。
「あれって、男同士にも言えるんじゃないかなって」 「はぁぁ?」 「男女だと力の差が在るから、意に添わなくても無理矢理ってあると思うんだよね。でも男同士だと余程の体格差が無い限り力は拮抗しているものだから」
無理矢理は絶対成り立たない。
「許して受け入れていなければ行為が成立しないと思う」 「で、その鳥の話を持ち出して、おまえはおれに何が言いたいわけ?」
じんわりと背中に汗をかきながらヒカルがアキラに尋ねると、アキラはにっこり笑ってひとこと言った。
「感謝しろ!」 「―はい」
最早ヒカルに反論の余地は欠片も無かった。
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