言うのは今しか無いと思ったので、進藤を呼び出して川べりで告白した。
「キミのことが好きだ」 「―ヤダ」
何の躊躇も無く断られて目の前が真っ暗になる。
自惚れているとは思ったけれど、それでも確率は半々だと思っていたから。
「そうか…ごめん」
忘れてくれと背を向けて帰ろうとしたらいきなり強く引っ張られた。
「だからヤだって言ってんだろう」
そもそもおまえ、いつでも唐突過ぎるんだよと怒ったような口調で言われてムッとする。
「別に、言いたいと思ったから言っただけで、そのことに文句を言われる筋合いは無い」
「って、なんで今日いきなり告ろうなんて思ったんだよ」
「今日だから言ったわけじゃない。ただ…こんなふうに思っているだけで伝えないまま終わるのは嫌だと思ったから」
どうせダメだと諦めて、気持ちを伝えないまま友人として終わる、そんなのは絶対耐えられないと思ったのだ。
「キミに好きな人が出来て、その人と結ばれて、温かい家庭を持って…そんな光景を見たらきっとぼくは後悔するから」
だから告白したのだと言ったら進藤は大きく溜息をついた。
「不快だったのは解ってる。もう二度とは言わないから」 「その前に取り消せ、さっき言ったこと全部取り消せ」 「は? 何で? 嫌だよ」 「嫌でも何でもさっきのは無し。おれは認めないからな」
幾ら不快だったとしてもこの扱いはあんまりではなかろうかとムッとして口を開きかけた時、進藤がぼくに向かって生真面目な顔で言った。
「おまえのことが好きです。だからどうか付き合って下さい」
そして深々頭を下げる。
「―――って、どうして」 「おまえが全部悪いんだって、普段しれっとしたツラしてて、んなこと何にも考え無いようなオーラ醸し出していて、それでいきなり告白なんて卑怯技使いやがるから」
おれのがおまえよりずっと前からおまえのことが好きなんだから、おれより先に告白するなんて許さないと、憤然とした態度で睨まれて猛烈に腹が立った。
「なんだと? そんなつまらないことでぼくの気持ちを拒否したのか?」 「拒否なんかしてねー、おまえに先に告られんのがヤダって言ったの!」 「キミね、子どもじゃあるまいし」 「子どもじゃねーよ。だからこそ、こういう順序は気になんだよ」
おれがおまえのこと好きなんだ。だから大人しく了承して付き合えと偉そうに言われて言い返した。
「承知しかねるね。キミは自分の方が先って言っているけど、絶対にぼくの方がキミを好きになったのは先だと思うし」
だから譲らないし、取り消さないよとその場で睨み合いになった。
「負けず嫌い!」 「…キミがね!」
そしてそのまま大喧嘩になってぼくと進藤は二ヶ月ばかり口をきかなかった。
周囲も遠のく険悪な完全無視の期間の後、少し頭が冷えてから、ぼく達は改めて自分の気持ちを告白し合い、それから漸く甘い仲になったのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
※私の中のヒカルはそんな感じ。ちょ…先言ってんじゃねーよと、嬉しいよりもまず先にムカっとします。そしてアキラも同じで、は?…拒否って勝手なこと言ってるんじゃないとこれもまたムカっと来ます。
負けず嫌いカップル。
それからあれですね。先に告白されちゃうと、それでポジションが決まっちゃうような所があるとヒカルは思ったんでしょう。
|