どうしてもその人で無ければいけないの?
長い話し合いの後にそう言われた。
『まだあなたは若いし、初めての恋を一生のものだと勘違いしているのかもしれない。この先にも出会いはたくさんあるのよ?』
ああ確かに出会いはあるだろう。でもこいつとの出会いはただ一つしか無い。
『ごめん。それでもおれには恋は一つだ』
一生でたぶんこいつにしか恋出来ないと言った瞬間に隣に座っていた塔矢が泣いた。
『ごめんなさい』
ぼくにとってもきっとそうですと、もうここに来て何度繰り返したかわからない謝罪の言葉を繰り返す。
『許して下さい』
それでもぼくはどうしても進藤が好きなんですと。
出会った最初からきっとお互い好きだったんだ。
一目見て焼き付いて、それから二度と脳裏から消え去ることが無かった。
これから先どんなたくさんの人に出会ったとしても、こんなに強烈で鮮烈な出会いは、たぶんきっと絶対無い。
そしてそれはきっとこいつにとってもそうなんだろう。
『許して下さらなくてもぼくは進藤と別れません』
別れられないですと、『イイコ』のこいつはその後自分の両親にもはっきりと言った。
『親不孝でごめんなさい』と。
ああ、そうだ。おれ達世界一親不孝だよなとは帰り道に話したことで、でもそれに微塵の後悔も無い。
それを外道と言うなら言え。
塔矢は自分を鬼だと言った。自分の欲望のためにはおれの意志すら考え無いかもしれないと。
(でも、それならおれだって同じだよ)
きっとおまえが嫌だと言っても、耐えられないと言っても、他に好きなヤツを見つけたとしても触れてしまったその体をもう離せないと思うから。
世界中の誰にも認められない。けれどこういう堕天ならシアワセだと思いつつ、おれは泣いている塔矢を強く抱きしめたのだった。
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