SS‐DIARY

2011年12月24日(土) (SS)伝説もしくは計画的犯行


日本棋院には一つの伝説が残っている。

ある冬の日、院内の見回りをしていた職員が、使っていないはずの部屋に人の気配を感じて入室してみると、あろうことか若手棋士が二人抱き合ってキスをしていたのだ。

神聖な場でという以前に二人ともまだ十代であったことなど様々な問題があったので急遽お偉方が招集され、その二人も交えて話し合いになった。

『そりゃあ、あんな所でしたのは悪かったと思ってるけど、どうしてこいつと別れなくちゃならないんですか?』

『え? 日本では同性同士の婚姻は認められて無い? そんなのおれらが大人になった頃、どうなってるかわからないじゃん』

『それっておれが五冠を得るくらい有り得ないこと? わかった。じゃあおれがもし五冠を獲ったらこいつと結婚してもいいんですね』

子どもの言うことと苦笑しつつ、皆はそれをいとも軽く承諾した。

『わかりました。それじゃその時になっても絶対約束違えないで下さいね。おれ、絶対五冠獲ってこいつと結婚しますから』


そして十年。

見事五冠を獲得した進藤ヒカルは、周囲の誰にも文句を言わせることなく、親友であり、ライバルであり、子どもの頃からの最愛の人である塔矢アキラと結婚したのであった。


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