「なあ、おまえエイエンってあると思う?」
いきなり尋ねられて驚いた。それはとても彼が口に出しそうなことでは無かったからだ。
「…それが流行りの冗談か何かならぼくはそういうのは解らないから」 「馬っ鹿、違うよ。言葉のまんま。おまえ、ずーっと続く物とか変わらないものとかあると思う?」 「ぼくは…」
あると思うと答えようとした時、進藤がぼくの言葉を待たずに被せるように言った。
「…無いんだよな、これが」 「え?」
それもまた前向きな彼の口からは出ないような言葉だった。
「永遠の愛とか、変わらないナントカとかみんな結構フツーに口にするけどさ、本当はそんなもんどこにも無いんだ」
らしくない切ない口調と、ここだけはいつも通りのきっぱりと言い切った言葉尻に何故か非道く悲しくなって同時に非道く腹が立った。
「…だったらそう思っているといい」 「塔矢?」
きょとんとしたような顔に投げつけるようにぼくは言った。
「永遠に変わらないもの、ずっと続く物、無くなんか無い」
あるよと言ったぼくの言葉に進藤はすっと目を細めた。
「なんだよその断定口調、おれはそう『知ってる』から言ってんだぞ」 「ぼくも『知っている』から言っている」
ああダメだ。それは言ってはいけないことなのにと思いつつ、もう言葉が止まらない。
「ぼくのキミへの想い。どれだけキミのことを好きか、好きで居続けたか」
それは決して変わることが無いしこれからも永遠に続くよと、言い終わった瞬間もう彼の顔を見ていられなくなって背中を向けた。
「ごめん…悪い、冗談だ」
そして立ち去ろうとするのを進藤の手がぼくを捕まえて言った。
「逃げてんじゃねーぞ、この野郎」 「ぼくは別に…」 「せっかく信じてやろうかと思ったのに、それを一秒で破壊してるんじゃねーよ」
おれもおまえが好きだよ。ずっとずっと好きだったよと、そして無理やり引き戻されて、顔の間近で囁かれた。
「も一回、言ってくんない?」
頼むからおれに永遠を信じさせてくれよと、その瞳の色は信頼する者を失った子どものような寂しさを秘めていたので迷わず言った。
「あるよ」
――永遠はぼくとキミの中にあると。
|