| 2011年07月13日(水) |
333333番キリリク�◆屮劵�ルからの着信を全て無視するアキラ」 |
「塔矢くん」
ふいに呼ばれて顔を上げる。
「何か、キミの携帯、震えているみたいだけど」
打っていた相手が「どうぞ」と目で促すのに「いいえ、大丈夫です」と笑顔で答える。
「かけて来ているのは誰かわかっていますので」 「そう?」
声をかけてくれた年配の棋士も、ならばということで去って行った。
月に一度訪れる父に縁のある研究会は、ぼくより年嵩の人が多く、だから携帯はいつもは電源を切っておくのだけれど、今日はマナーモードにするに留めておいた。
「また、震えてるねぇ」
本当に出なくて大丈夫なのとそれから終わるまで何度も気遣うように言われたけれど、ぼくは一度も電話に出なかった。
そしてそれは研究会だけで無く、ここの所毎日続いている半ば日常茶飯事のような出来事でもあったのだ。
「アキラー、アキラの携帯、着信があったみたいだけど」
誘われて行った食事の席、トイレに行って戻って来たら、芦原さんに声をかけられた。
「メールかな? それと二度くらい電話もかかって来ていたみたいだけど」 「そうですか。でも別に出なくてもいいんですよ」 「えー? なんで」
置いていた鞄の中から携帯を取りだして着信を見る。見ている間にもまた電話がかかって来ていて、液晶に映る名前を見ながらぼくは冷笑するように微笑んだ。
「迷惑電話と迷惑メールみたいなものなので」
だから出ない。出ないで放っておくのが一番なのだと。
「だったらどうして着信拒否にしておかないの」
鬱陶しいでしょうと言われるのに笑って答える。
「いいんです。おしおきなんですから」 「おしおき? なんだか不穏だなあ」
けれどそれ以上詮索はさせず、ぼくは携帯を鞄の奥深くに仕舞ってしまった。
着信の名前は進藤ヒカル。
この間からかかって来ている電話とメールのほとんどが彼からのものだった。
(まったく、こんなに頻繁に着信があったら本当に迷惑メールと変わらないじゃないか)
一週間ほど前、ぼくは彼と喧嘩をし、以来仲直りして来ようとかけて来る彼の電話の類を一切拒否し続けている。
というのも喧嘩の原因が、いつもの如く彼の悪い癖、『塔矢に怒られるのが怖いから、女の子に誘われて出かけたのを黙っていた』だったからだ。
それが純然たる仕事絡みだったことは解っている。相手にも恋人がいて、だからおかしなことになるわけが無いことも解っている。
なのにそれをわざわざ隠す所が気にくわないのだ。
『キミは気の遣い所を間違えている』 『だったらその焼き餅妬きの所をまず直せよ』 『ぼくがいつ妬いたって?』
後はもう泥仕合のようにお互いの罵り合いになり、最後はお互い捨て台詞のように非道い言葉を投げ合って別れた。
でも頭が冷えたのは彼の方が先で、家に着く前にはもう謝りの電話がかかって来たけれどぼくは無視した。
ぼくの方は全く頭が冷めていなかったからである。
「大体…そんなことで疑われるような日常を送っているから悪いんじゃないか」
普段から信用させてくれるような、そんな態度でいてくれたらぼくは不安にも何にもならない。
ぼくの方にそんな揉め事は出て来ないのは彼に対して筋を通しているからで、なのにどうして同じことが出来ないのだと、思ってしまうのだ。
「優しいのと優柔不断は違う」
たくさんの着信履歴を眺めながら呟く。
「気遣いと八方美人もまた違う」
言っている間にもまた更にメールが二通届いてぼくは笑ってしまった。
「そうやって謝り続ければいいよ。ぼくはまだ当分はキミを許してなんかあげないんだからね」
ごめん、悪かった、許して、もう二度としない。信用して。
どれだけの言葉が連ねてあるのか見なくても解るような気がしている。
そしてそれが心からの言葉であることもぼくは充分理解していたけれど、それでもまだ電話もメールも受けてやる気持ちにはなれなかった。
「キミは反省が浅いから、しばらくは悶々と苦しめばいい」
その間にぼくも誰かとたまには出かけてみようか?
ことごとく断り続けて来た女性からの誘いを受けてみるのもいいかもしれない。
もちろん仕事関係以外を受けるつもりは無かったけれど、それでも進藤は気が違ったようになるに違い無いのだ。
「ざまをみろ」
少なくとも後千回は着信があるまで許してなんかやらないのだからと、携帯に向かって呟きながら、ぼくはそれをベッドの上に放り投げると、気分転換をするためにシャワーを浴びに行ったのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※
333333番のキリ番リクエスト、Jeakiさんから頂いたお題�癸押屮劵�ルからの着信を全て無視するアキラ」です。
同じようなネタをよく書いていますが、すみません。好きなんです(^^; ということで今回これが一番書きやすかったです。
ヒカルが少々可哀想ですが、アキラの言う通り、気の遣い所を間違えているので仕方無いんじゃないかなーと思います。ヒカルスキーの方、すみません。
|