| 2011年07月12日(火) |
333333番キリリク� 屬�持ち帰り」 |
「じゃあそれでいいんだな」 「ああ、おれが責任持って送って行くから」 「悪い、そんじゃ任せたから」
頭上で交わされている会話が、ずっと遠くからのように聞こえる。
目はぴったりと閉じていて、開こうと思っても開けない。手も足も鉛のように重たくて、動かすことが出来なかった。
「立てるか? おまえ」
声をかけられてようやくぼそりと呟いた。
「…無理」 「しょーがねーな。ちょっと足引きずるかもだけど文句言うなよな」
ぼくに話しかけているのは進藤で、だったら別に心配することは何も無いと思った。彼が一緒なら、絶対に非道いことにはならない。
確かぼくは今日彼に誘われて和谷くん達との飲み会に来ていて、二次会、三次会、四次会まで連れ回されたのだと思った。
かなりセーブして飲んでいたつもりだったけれど、途中から意識が怪しくなり始め、最後カラオケに行った段階でソファに崩れるようにして眠ってしまった…のだと思う。
はっきりしていないのはまだ半分以上意識が眠っているからで、担がれるようにして起こされ、無理矢理歩かされているように思っても、本当にそうなのかどうかは解らない。
「あー、もうおまえ軽いようで結構体しっかりしてるよな」
ぶつぶつと言われた後、いきなりどさっと落とされて驚いたけれど、感触が柔らかかったので、タクシーに乗せられたんだと思った。
「…すまない」
ドアの閉じる音に、ああやっぱりそうなんだと思い、辛うじて最後の理性で礼を言ったら笑ったような気配があった。
「いいよ、おれが飲ませたんだし」
だから責任持って連れて帰るからと、そうかさっきのやり取りは酔いつぶれたぼくをどうするか和谷君達と相談していたんだと今更ながら思った。
「…本当にごめん、タクシー代は後で払うから」 「いいよ、別にそんなん気にするな」
そして後はゆらゆらと心地良く揺られ続けたことだけしか覚えていない。
「塔矢」
呼ばれて目を開いた時、ぼくはベッドに寝かされていて、すぐそばには進藤が立っていた。
「あ…もう家?」 「まあな。っても、おまえんちじゃないけど」
てっきりぼくの家に送ってくれたものだと思っていたのに、ぼくの家にはベッドは無い。じゃあ彼は自分の家に連れて帰ったのだと思った。
「すまない。そんなにぼくは手に終えなかったのか」
さっきより幾分意識がはっきりしていて、改めて周りをよく見る。そしてぎょっとした。
そこは彼の家でも無かったからだ。
明らかに室内の装飾がおかしい。
暗めの間接照明はピンク色に近い色で室内を照らしていて、寝かされているベッドも通常のものよりかなり大きい。
首を巡らせると何故かすぐそばにシャワーブースのようなものが見え、そこがガラス張りなのがどうにも奇妙で違和感があった。
「ここは…」 「えー? んーと、まあ所謂ラブホってヤツ?」
思考が止まった。そしてそこから猛烈な勢いで回り始める。
「ぼくが吐きそうになってタクシーを下ろされた?」 「いや?」 「帰らないと言い張ったとか」 「いんや。おまえ死体みたいに大人しかったよ」 「だったらどうして」
どうしてこんな所に居るのだと、思わず体を起こしてドキリとした。
ぼくは―。
薄い掛け布団の下、寝かされていたぼくの体は何も身につけていなかった。
「進藤?」
恐る恐る尋ねてみると、進藤は悪びれない笑顔でぼくに言った。
「んーとね、おまえには悪いんだけど、お持ち帰りさせて貰った」 「は?」 「おまえ、滅茶苦茶酔っぱらってたじゃん? それで意識も朦朧としていたじゃん? これはもしかしなくてもチャンスかなあって思って」 「…言っていることが解らない」 「解れよ。これでも一応紳士的に何もしないで、おまえが起きるの待っていてやったんだからさ」
おれはおまえのことが好き、ずーっと前から抱きたいと思っていたと面と向かって言われて頭の中が完全に真っ白になった。
「は? それは…つまり…えーと」 「ヤリタイってこと」
にっこりと、どうして進藤はそんなことをそんなに良い笑顔で言えるんだろう。
「まあ、それでもおまえがどーしても絶対、死ぬ程嫌だって言うなら手は出さない」
…つもりでいると補足した。
「どーする?」
尋ねられてもどうするもこうするも返事が出来ない。
「だって…ぼくは…」 「酔っぱらってたおまえに聞いたら『いいよ』って言ったぜ? それからついでにおれのことどう思っているのかもたっぷり聞かせて貰った」
信じられない!
「それで、だったら強姦にはならないからいいかなって結論になったんだけど、それともあれは本気じゃなかったか?」 「そんな…酔った自分が言ったことなんて」 「そう言うと思って携帯で録音しておいたんだけど、なんだったら聞いてみる?」 「いや、いい、絶対聞きたくなんか無い!」 「そ? おまえすっごく可愛かったんだけどなあ」
にこにことぼくを見る進藤は悔しいけれど男前だった。
欲しいものが手に入る。手に入ったも同然の時、人はこんなにも自信に溢れて見えるものなんだろうかとそんなことに変に感心した。
それに対してぼくはどうだ。長年隠して来たことを酔いに任せて白状してしまった挙げ句、こんな窮地に立たされている。
「で、時間はたっぷりあるし、もう少し待ってやってもいいんだけど」
結局おまえはどーするのと、尋ねられてぼくは泣きたいような気持ちで彼を見た。
「どうするって…」 「ああ、じゃあ質問変える。おまえはおれのこと好き? 嫌い?」
ヤッてもいいくらいにおれのことを好きかどうか、素面の今、もう一回おれに教えてよと、ぐっと顔を近づけられて陥落した。
敵うわけがない。
もうぼくが自分のことを好きだと知っていて、拒むわけが無いと信じている相手にどう足掻いたって勝てるわけなんか無いじゃないか。
「好き…だよ」
恥ずかしさに悶死しそうになりながら、小さな声で呟いた。
「ぼくもキミのことをずっと…ずっと好きだった」
だからいい。もういいよと言った瞬間の進藤は、正に太ったネズミを前にした猫の如き顔だった。
してやったり。
これ以上無いくらい満足そうに笑って、「サンキュ」と言った。
そして耳まで赤く染まり、身の置き所無く固まっているぼくの体を突き倒すと、ゆっくりとベッドに上がり、「いただきます」と笑ったのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※※
333333番のキリ番リクエスト、Jeakiさんから頂いたお題�癸院屬�持ち帰り」です。 候補として三つ頂いたのですが、どれも書きやすかったので全部書かせて頂きました。
説明するまでも無いかと思いますが、ヒカルは最初から潰すつもりで飲ませています。 お持ち帰り前提の飲み会です。結果大成功でアキラは少々気の毒です。でも愛があるからいいよね?
|