SS‐DIARY

2011年05月30日(月) (SS)名前を呼んで


「進藤」
「あ、ごめん、進藤」
「進藤、さっき言い忘れたことがあったんだけれど」

意識していたわけでは無いのだけれど、ぼくは普段かなりの頻度で進藤の名前を呼んでいるらしい。

「進藤、いいかな」

呼び止めたらいきなりぷっと笑われた。

「なに?」
「なんでも無い」

聞いたら進藤はにやにやとしながら、でも何で笑ったのか教えてくれない。

「そういう態度は良くないな。後悔したくなかったら今すぐに言え」
「って、おまえマジで睨むなって」

実はさと、しつこく尋ねてようやく教えて貰ったのは、ぼくがその日彼の名前を三十四回も呼んだということだった。

「バカな! そんなに呼ぶわけが無いだろう」
「いーや、呼んだね。おれずっと数えていたんだから間違い無いよ」

よくもまあそんな暇なことをと思ったけれど、心当たりが全くないわけでも無いのできまりが悪い。

「それは…ぼくは確かにキミを呼ぶことが多いかもしれないけれど、だからって一日でそんなに多くは呼んでいないと思う」
「そうでも無いよ。もっとたくさん呼んでくれることもあるし」

他の日にも数えていたのかと、カッと頬が熱くなるような気持ちで進藤を見詰める。

「うん、確かに数だけ聞くと多いかもしんないけどさ、これ夜の分もカウントされてるから」
「夜?」
「そ。12時回ってから今まで全部を数えて三十四。あれ?…だったらもっと多いよな?」

おまえ、あの最中にずっとおれの名前呼びっぱなしだもんなと言われて思わず殴ってしまっていた。

「もう二度とこんなくだらないことはするな!」
「えー?」
「やったら今度はぼくが、キミがぼくの名前を呼ぶ回数を数えてやる」

それも夜から全部だと言ったら進藤はぷっと吹きだした。

「いいよ? 数えて」

つかむしろぜひ数えて欲しいな。そうしたらおれがどんなにおまえのこと好きかわかるからと言われて、ぼくは再び彼の頭を思い切り殴ってしまったのだった。


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昨日が名前を呼んでも気がついて貰えない話だったので、今日は気がついて貰えてる話。バカっぷるの惚気とも言う。


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