キミが好きで好きで。
もうずっと前から好きで。
好きで好きで好きで好きでもうどうしようも無いくらい好きで。
こんなにキミのことばかり考えていたらぼくはきっとおかしくなる。キミのこともダメにする。
そう思ったら悲しくなった。
「って、どーしてそこでネガティブ行くかな」
俯いてようやく言った(言わされた)ぼくの気持ちを聞いた後、進藤は呆れたように笑って言った。
「どうしてそう、なんでもかんでも悪い方に行くなんて思えんの?」 「だって、キミを好きになったって誰にも言えないし、一生一緒に居ることだって出来ないし」
誰もぼくがキミを好きだということを知らない。知ったらきっと遠ざかってしまうと、半べそのように言ったら鼻先をぴんと弾かれた。
「バーカ」
おまえバカなんじゃない? と進藤は苦笑のような顔でぼくを見る。
「そんなこと、自分らの気持ちがしっかりしてればなんとでもなることと違うか?」 「そんな簡単なものじゃないだろう」 「簡単だよ。おまえはおれが好き。それでおれも―おまえが好き。大好き」
先に言われちゃって悔しいなあと、そこだけは本当に悔しそうに言う。
「おれだってさあ、おまえのことバカみたいに好きで、いっつもおまえのことばっかり考えてて、好きで好きでどうしようも無いくらい好きで」
このまま行くと犯罪者にでもなっちゃうんじゃないかと怖かったのにと言われて少し驚いた。
「…なんで犯罪者?」 「そりゃーおまえ、アレだよ。我慢出来なくて襲っちゃったりとかさ、もしおまえが誰かとケッコンしたりしようとしたらさ」
辛くて、悲しくて殺してしまったかもしれないと、進藤は怖いことをたまらなく切ない口調で言う。
「そのくらいおまえのこと好きなんだ」
だれにも渡せないくらい好きだからと。
「…だったらもう少し、解るようにしてくれたら良かったのに」 「うん、ごめん。でもおれ、それだけが怖かったから」 「何が?」 「おまえがおれのこと、タダの友達としてしか見てなかったらって、受け入れて貰えなかったらって、それだけが死ぬ程怖かった」
だから匂わすことも出来なくて、それでここまで来てしまったと、それはごめんなと進藤はぼくに謝った。
「でも、だから平気なんだよ。おれにとって一番怖いのは人の目でもハブられることでもなんでもなくて」
おまえに拒まれることだったから―と。
「ご両親はどうするんだ?」 「理解して貰えるように努力する。ダメなら絶縁されても構わない」 「碁は? 打てなくなったらどうするんだ?」 「構わない。だっておまえがいるじゃんか。おまえと死ぬまで嫌って言うほど打つよ」
だから平気、おれは平気。好きだという気持ちの先に怖いもんなんか何一つ無いと言われて目が覚めるような気持ちになった。
「…キミはどうしてそんなにポジティブなんだ」 「名前のせいかな?」
ヒカルって、いかにもバカっぽくて明るそうじゃんかと言われて笑ってしまった。
「じゃあぼくは…物事をはっきりさせないと気が済まないって言うことになるよね」 「あー? うん、でもそれ当たってるんじゃん。いや、子どもに名前をつける時は考え無いとマズイよなあ」
いつの間にか、俯いていたぼくの顔は上を向いている。
足先だけを見詰めて、死にそうに苦しかった胸はもうどこも痛く無い。
(そうだね)
お父さんが怒って、お母さんが泣いて、今までも持って居た全ての物を無くしてもキミが居ればそれだけでいい。
(それだけで…いいんだ)
「ありがとう」
ぼくの言葉に進藤は笑った。
「何が?」 「なんでも無いけどありがとう」 「それを言うならおれの方だろ」
好きになってくれてありがとうと、そして照れ臭そうに笑ってから小さくひとこと付け加えた。
「おれもホント、マジでおまえのこと大好きだから」
一生大事にするから一生一緒に生きていこうと言われてぼくも幸せで笑った。
二人なら大丈夫。何があっても大丈夫なんだと、目の前で笑う進藤の笑顔を見たらぼくは信じることが出来た。
好きは辛い。
好きは切ない。
好きは怖くて、時に痛い。
でも通い合う好きはどんなものより強いんだと、この日ぼくは知ったのだった。
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全国のヒカルさんすみません。そんなこと思っていませんから!
そして、出だし「片恋」と似た感じになってます。お対ではありませんが、ちょっと共通するものがあるかもです。
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