しばらくの間会わないと言われて、悲しさのあまり目の前が暗くなった。
「どうして、しばらくってどれくらいぼくと会わないつもりなんだ」 「そんなの解らない。って言うか、おれ、おまえにフラれたんだぞ。なのに 平気な顔して顔合わせて打つなんてそんなこと出来るわけねーだろ」
少なくともおれは出来ない、だから平気になれるまではおまえとは会えないよと言われて足元がふらついた。
「どうして…」
理由は聞いた。でも解らない。
どうして『それくらいのこと』で、ぼくはキミに会えなくなってしまうのだろう。
そう言いたくて、でもさすがにぼくもそれを言ったら永遠に進藤に会えなくなるだろうくらいのことは解る。
「ま、そういうことだから、しばらく素っ気なくてもごめんな」
フラれても堂々としてられる大きな男でなくてゴメンナサイと、苦笑のように笑って去ろうとする進藤の服の裾を気がついたらぼくは掴んでいた。
「何?」 「嫌だ」 「嫌だって何が?」 「キミに会えなくなるのは嫌だ」 「だって…仕方ねーじゃんよ」 「仕方無くても、それでも嫌だ」
いつかって、それはいつだ?
ずっと前、会ってくれない彼を待ち続けたように、今度はぼくはどれ程の時間を待ち続けなければいけないんだろう。
「おまえさ…ちょっとは思いやりってもんがあってもいいんじゃねーの?」
恋愛対象としては見られない。そういう意味での付き合いも出来ない。でもだからって会えなくなるのは嫌だって言うのはあまりにも自分勝手で我が侭なんじゃないかと。
「そうだよ、ぼくは自分勝手で我が侭だ」
でも、それでも会えなくなるのはとても辛い。今こうしているように話せなくなると考えることは身を裂かれる程ぼくには辛い。
「おれは?」 「え?」 「傷心のおれのことはおまえどーでもいいわけ」 「どうでもいい」
きっぱりと言った瞬間、進藤の眉が顰められ、一瞬ぼくは彼に殴られるのでは無いかと思った。
でも彼は振り上げた腕をぼくに向かって振り下ろさなかった。
「…なんで?」
代わりにゆっくりぼくに尋ねる。
「なんでおれにそんなに非道いの?」
彼の声は切なく、胸を抉られるような響きを持っていた。
「なんでって…キミだから」
じっとぼくを見詰める彼の瞳を見つめ返しながら、ぼくは答えた。
「キミは…だって…ぼくのものだから」
会いたい時に会えないのは嫌だし、話したい時に話せないのは嫌だと言ったら進藤は驚いたように目を見開いた。
「なんだそれ」 「わからないけど、そう思うから」
だからキミはぼくにフラれたけれど、だからって誰とも付き合ってはいけない。ぼく以外の誰かを好きになってもダメなんだと言葉を足したら見開いた彼の目はゆっくりと苦笑のような笑いになった。
「…それでもおれとは付き合ってくれないんだ」
おれの好きも受け取ってはくれないんだ? と囁くように言われて思わず俯く。
「付き合え無い。キミの気持ちも受け取れない」
それでもキミはぼくのものだから。一生永遠にぼくだけのものだからと繰り返し言ったら大声で笑われた。
「一つだけ確認いい?」 「いいよ」 「それって、おれは確保しておいて、おまえは誰か他のヤツと付き合ったり結婚したりするってこと?」 「まさか! ぼくは誰とも付き合わないし結婚もしない」
一生独身で過ごすつもりだと言ったら彼はわかったと言った。
「…うん、了解。おれはおまえにフラれたけど、一生他の誰も好きにならない」
そして一生おまえの側に居て、永遠におまえと打てばいいんだよなとぼくの言葉をなぞるように言った。
「そうだよ。そうでなければ許さない」 「…傲慢」
傲慢で最低で我が侭で非道い。
でも最高に嬉しかったから、一生おまえの側に居てやるよと、進藤は言ってぼくの体を拒む間も無く、そっと包むように抱いたのだった。
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解り難くてすみません。アキラがまだちゃんと自覚出来て無いってだけの話です。 自覚出来て無いけど、ヒカルは自分の!他の誰にも絶対にやらないと思っている非道い話です。
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