SS‐DIARY

2011年05月10日(火) (SS)誠心誠意で愛してる


「で、あのスミマセン。スル方がやりたいんだけどやらせてくれる?」

お互いに好きだということが解って、次に進藤が拝むようにして言ったのがこれだった。

「おまえ男らしーし、下とかプライド的に許せないものがあると思うし、絶対嫌だとか思っていると思うんだけど、おれは圧倒的にされるよりしたい…デス」

とにかくしたい。おまえにいろんなことしたくてもう気が狂いそうなので、出来ればお腹立ちを収めてそうゆうことにしてくれませんかと、進藤にしては珍しくただひたすらにお願いをするので可笑しくなった。

「別に…いいよ」

そもそも、最初からする方という意識が無かった。

進藤ならしたがるだろうし、されて当たり前的な感覚があったので彼がどうしてそんなにも恐縮しているのか解らない。

「いいの? 本当に?」
「キミがどう思っているか知らないけど、ぼくは別に拘りは無いし、キミがしたいようにしてくれたらそれが一番嬉しいと思ってる」

どうしてだろう。碁だったら絶対に譲らないと思うのに、碁を離れるとぼくは進藤に大して非常に受け身だ。

押しには勝てないという意識があるのと、たぶん彼には喘ぐより、喘がせてくれる強さを自分は望んでいるのだろうと思う。

「えーっと、それじゃよろしくお願いします」
「対局じゃないんだから」

思わず吹きだして笑ってしまったけれど、どうして普段は無礼なのにこんな時に真面目なのか。

(でもそれはきっとぼくのことが好きだからだよね)

彼なりの悩みに悩んだ勝負手をぼくはこれ以上無く快く思った。

(そもそもぼくの方がキミのことをずっと、ずっと好きなんだから、その時点でもうキミに勝てるわけがないんだ)

言ってやるつもりは無かったけれどこれは紛れも無い本音だった。

「進藤」
「なっ、なに?」

ごそごそとぼくの服を脱がしにかかっていた進藤はびくっとして顔を上げた。

「何? おれなんかマズイことした?」

やらかしちゃった? と狼狽えているのでまた笑った。

「マズイも何もまだ何もしていないじゃないか」
「そ、そーか。そーだよな」

でも手が震えちゃってと言うその顔に愛しさが溢れる。

「で、何?」
「まだ言っていなかったなと思って。キミが好きだよ」

にっこりと笑って言ったら進藤は呆れる程はっきりと真っ赤になった。

「なにそれ、心理戦?」
「違う、心からの言葉だ。キミが好きだから何をされても構わない。それだけ覚えていてくれたらと思って」
「あっ…」

ありがとうございマスと耳まで赤く染めながら進藤はバカ丁寧にぼくに言った。

「誠心誠意、大切に頂かせていただきマス」
「バカ―」

本当に本当にバカだなあと思いつつ、それでもそんな彼が大好きで、愛しくて嬉しくてたまらないので、ぼくはまだ手の震えでボタンを外せないでいる彼の代わりに自分から進んで、服のボタンを外し、ぎゅっと彼を抱きしめたのだった。


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緊張のあまりテンパって、有り得ない敬語が連発になること請け合い。
「ご満足いただけますよう、更なる精進を続けたいと思います」
「フツツカ者ではありますが、今後も(見限ること無く)よろしくお願いいたします」等々。


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