| 2011年05月06日(金) |
(SS)将来の夢は専用主夫 |
昼はチャーハンにしたから夜はパスタにしよう。
冷蔵庫に鮭の切り身があるから翌朝はそれにご飯とみそ汁で、野菜が無いと言われたらトマトでも切って出してやればいい。
その次の昼は焼きそばにしようか、いっそ外に出て食べてもいいなと、そこまで考えてヒカルは失笑した。
「…おれは主婦か」
主婦でも主夫でも無いけれど、恋人が促さないと積極的に食べない性質なのだから仕方がない。
まだベッドで眠っているはずの恋人―アキラは、昨夜も今朝もあまり多くは食べていない。
『もう少し食わないと体が持たないって』 『そんなことは無い、腹八分目って言うだろう』
「…八分目どころか三分目くらいしか食って無いじゃん」
疲れているのだと、それはヒカルも解っていて、でも解っているから余計に少しでも食べさせたくなる。
「別に痩せてんのはいいけど、顔色悪いのはこっちが見てて堪えるんだよなぁ」
手合いが続けば更に削げる。
やつれたなと思うと、休ませること無くその体を抱いている自分がまるで鬼 畜のようにも思えてくる。
「とにかく、そうだな。やっぱ明日の昼は外で食べよう。この前門脇さんに教えて貰ったフレンチなら、塔矢も結構好きだと思うし」
そしてそれからその後は―。
「ちょっとだけ買い物して、後はご褒美に好きなだけ打ってやるかな」
何しろあいつの大好物は、おれよりも食いモンよりも碁だもんなあと苦笑しつつ、ヒカルは目の前の棚からオレンジを取り上げると無造作に籠の中に放り込んだ。
「ビタミンも大事、あいつには」
あれもこれも足りない、どれもそれも摂らせたい。
つらつらと考えながら食材を眺める。
独身男のするこっちゃ無いなと思いながら、それでもこうしてアキラのために色々考えて買い物をする。それがヒカルにはとても楽しく、シアワセだった。
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専業ではありません。あくまで「アキラ専用主夫」です。
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