進藤との関係を知った時、父はぼくに別れるようにと言った。
「嫌です」 「それが進藤くんのためでもか?」
おまえ一人の問題ならばいい。けれど彼もまた人の冷たい視線を浴びて排除されるようなことになったとして、それでいいと思うのかと問われて一瞬返せなかった。
「もしその気持ちが本物だと言うならば、相手の幸せをまず第一に思うべきなのではないか」
反論したくても父の言うことは一々もっともで、ぼくは俯くことしか出来なかった。
悩み、懊悩した挙げ句、ぼくは彼に別れを切り出した。
「嫌だ」
進藤の答えはきっぱりとしていた。
「おまえ別におれのこと嫌いになったわけじゃないんだろ?」
お互いに好き合っているのに別れるなんて納得出来ないと言う。
「でもぼくはキミに幸せになって欲しい」 「おれの幸せはお前だ!」
怒鳴るように言われて目が覚めた。
以後、ぼく達は今に至るまで一緒に居る。
時に冷たい仕打ちに遭うこともあるし、あからさまな侮蔑を受けることもある。
でも―。
気持ちを偽らず貫いた。そのことが今もぼくをどんなに厳しい状況下でも常に満たし幸せにする。
彼を好きになって良かったと心の底からそう思う。
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