| 2011年02月13日(日) |
(SS)酒と涙と男と男(2) |
度を超して飲んだ。その自覚はある。
初めて会う相手と普段行かないような店に行った。
いつもなら自制してほどほどで止めておく所を浴びるように飲んでしまったのは、気がすすまない仕事絡みの飲食であったことと、その前に進藤と派手に喧嘩をしていたからだった。
どちらもよくあることではあるけれど重なるとキツイ。
『もうそのくらいにしておいた方が…』 『それは度数が高いお酒ですから』 『少し飲むペースが早いんじゃないですか』
等々。
宥めるように相手が言う言葉も効かずガブ飲んだ。
そして一軒では気が済まず、逃げ腰の相手を引きずるようにはしごをして、何軒目かのバーのカウンターで潰れた。
『大丈夫ですか?』 『タクシーを呼びますから』
心配そうな言葉に乱暴に手を振って、半分眠ったようになりながらまだ飲んだ。
途中から進藤への愚痴をこぼしていたような気もするが、それもよく解らない。
いや、実際は愚痴というよりも泣き上戸のように泣きながら自分の胸の内を切々と語っていたようにも思う。
どうせもう二度と会うことも無い相手だろうからと、その辺りで自制が緩くなったのは否めない。
会ったとしても自分が喋ったことを迂闊に言いふらして回ることは無いだろうとそう踏んだこともある。
とにかくぼくは浴びるように飲んで、喋りまくった。
喋らなくていいようなこと、喋った内容を知られたら――特に一名には死んでも知られたく無いことを喋って喋って喋りまくった。
そして、目を覚ました時ぼくは何故かソファーに寝せられていて、すぐ側には進藤の顔があった。
「あ、起きた。大丈夫、おまえ気分悪く無い?」 「どうして…」 「昨日、高塚さんから電話あってさぁ、おまえが荒れてて手がつけられないから引き取りに来てって泣きつかれてさ」
それで銀座まで拾いに行ったとこともなげに言う。
「高塚って…」 「おまえ、自分が飲んでた相手の名前も覚えてねーの? あの東北支部の人。おれ前に一度会って名刺交換したことあるから。昨日はおまえが接待係だったんだって?」 「いや……」
あれを接待と言ってしまっていいものか。
「それで迎えに行ったらおまえべろんべろんでさぁ」 「あの…それ、どれくらい…」 「さあ、まだ電車動いてたし、12時前だと思うけど?」 「それでぼくは…何かキミに…」
言った瞬間にやりと笑われた。
「いや、そうだな、うん。中々興味深いことを色々聞かせて貰った」
これからはもっとおまえのこと大事にするよごめんなと言われて頭を抱えた。
「…最悪だ」 「いや、おれは最高だったけど?」
邪気無く言われて沈没する。
もう、もう二度と…酒は飲んでも飲まれまい。
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これもまた前にも似たような話を書いた記憶がほんのり。 すみません、すみません。サ×エさんのようなものだと思って勘弁して下さいね(^^;
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