| 2011年02月06日(日) |
(SS)photograph |
ネットを巡っていて、ふと見た写真が忘れられない。
『新たな法制度の制定により、長い間連れ添った彼らは正式に結婚した』
ごく普通に神の御前で式を挙げる金髪碧眼の新郎二人。
気張ってもいず、気負ってもいず、ただただ自然だった。
もしもぼくと彼が―――。
日本に同性同士の婚姻を認める法律が出来ることはたぶん永遠に無いだろう。
永遠では無くても、ぼく達が生きているうちにそんなものが出来ることは無いだろうと思う。
「進藤…」
キミ、日本以外の国でぼくと籍を入れたいかと尋ねようとして黙った。
意味が無い。
だってぼく達はずっと日本で日本人の棋士として打ち続けて行きたいと思っているのだから。
(それに絶対)
進藤は結婚するならばここで、日本でしたいと言うに決まっている。
知り合いも誰もいないような所でこっそりと夫婦になるのでは無く、知っている人達に囲まれて、どんなに時間がかかっても理解を得て生きていきたいと。
(真っ直ぐだから)
どんな時も前だけを見て生きている彼だから、他所の国で結婚するということを望むはずは無いと思った。
それでも―。
彼がどんな感想を持つのか知りたくて、リビングでテレビを見ていたのを改めて呼ぶ。
「進藤」 「何?」 「この写真―」
パソコンの画面を指して見せると、進藤は少しだけ目を見開いてまじまじとそれを見た。
かなり長い間無言で見た後、ゆっくりぼくを振り返ってにっこりと笑った。
「すげーいい写真だな、これ」
他人事なのに、まるで自分の知り合いでもあるかのように、非道く嬉しそうに笑う。
「良かったよなぁ」
シアワセそうと、そうしてからふっと黙って、小さな声で言った。
「おれらもシアワセになろうな」 「え?」 「絶対シアワセにするから、おれのこともシアワセにして」
いつかこんな風に誰が見てもシアワセと思えるような結婚をしようと言ってぼくの頬にキスをした。
もう一緒に暮らし始めて何年になるかわからないのに、まるで初めてするかのような少し照れたキス。
「当たり前だ」
シアワセになろうと、ぼくも微笑んで返して、それから改めて愛情に満ちたキスを何度も彼と繰り返したのだった。
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法的に結ばれることよりも、隠さずに認められて生きることに意味がある。 そう思っているんじゃないかな。
あくまで日本で、この場所で、生きる。
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