SS‐DIARY

2010年08月24日(火) (SS)ファースト・キス

初めて塔矢とキスをした時、直後に思い切り殴られた。

嫌だったのかな、それとも恥ずかしかったのかなとその時は色々思い悩んだものだったが、後になって聞いてみたら思いがけない理由だった。

『だって…あれは…』

ラーメンを食べた後だったじゃないかと、考えもしないことを言われてきょとんとした顔で見詰めたら、顔を赤く染めた塔矢に言いにくそうに言われた。

『よりにもよってどうしてあんな時に…初めてだったのに…ネギとか…ニンニクとか』

もしも万一自分がネギ臭かったら嫌だったからと、聞こえ無い程小さな声で言う塔矢は滅茶苦茶可愛かった。

『馬っ鹿だなあ、そんなのおれも一緒なのに』

おれの方はそのことを全く気にもしなかった。

ただ、その日の内にどうしても絶対キスをしたいとそれだけを思い詰めていたので食べた物のことまで考え無かったのだ。




「本当にあの時のおまえは可愛かったよなあ」

一生忘れられない思い出になったと、ラーメンを食べながらふと思い出して言ってみたら、おれは再び前以上に思い切り塔矢に殴られたのだった。


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しょうこ [HOMEPAGE]