塔矢アキラが大好きだ。

そう言った時、反応は大抵二種類である。

棋士としての表面的なあいつしか知らないヤツはもっともだという感じで頷いて「素晴らしい方ですからね」と言う。

一方、若手棋士などそれより身近にあいつを知っているヤツらは一様に「ああ？ マジか？」とおれがどうかしているんじゃないかという顔をする。

「うん、だってさ、クソ真面目で融通きかなくてすんげえ性格悪いじゃん」

負けず嫌いでゴリ押しでという、そういう優しげな顔立ちと正反対な所が大好きだと言うと、前者は憮然として、後者は納得したりという顔になるのだった。

「そうですか？」
（信じられない、失礼な）

「そうだよなあ」
（そうだよ、あいつ程性格悪いヤツはいないよ）


けれどそのどちらも知らない。

（まあ確かに性格は悪いんだけどさ）

そのくせ天然で意外な所で抜けていて、時々こちらがびっくりするほど無邪気な顔で素直に笑う。

「そういう所が大好きなんだけどなあ」

でもそれは教えてやらない。

おれだけの大切な秘密なのだと微笑んで思う。