| 2010年03月09日(火) |
(SS)年に一度のお楽しみ |
なあ、居酒屋のレシートって交際費になる?」 「難しいんじゃないかな…って言うか、どうして領収書を切って貰わないんだ」 「だって酔ってる時にそんなこと考えられないじゃん。あ、そうだ、このバーゲンでスーツ買ったのは経費になる?」 「さあ、どうだろう…一応入れてみたらいいんじゃないかな」 「それと、マンガは…」 「ならない。キミは碁を打つのにマンガが必要なのか」
毎年毎年毎年、進藤は直前になるまで確定申告の準備をしない。
そして領収書の類も分類もせずそのまま一括りにまとめてあるので、それを月ごと、分類ごとに仕分けるのがまずものすごく大変だ。
「なあ、ディ○ニーシーに行ったのって…」 「そんなものが経費になるならみんなこぞって行っている」 「あ、じゃあホテルならいいだろう、ホテル。おまえと行ったラブホの―」
全部言い終わる前にひったくって破り捨てる。
「ああ〜っ」 「なったとしても、こんなものを経費として出すのは人としてどうかと思う」 「なんだよ、鬼」 「鬼で結構。これに懲りたら来年からはもっと早く準備するんだね」
ぼく自身はと言えば領収書の類は月ごとにちゃんと仕分けているし、計算ごとは嫌いでは無いので毎年自分で早めに申告を済ませている。
最近はネットでも申告出来るのでわざわざ出向かなくて良くなったのも更にいい。
けれど進藤は、計算は嫌い、あの書類をみただけで頭が痛くなるというタイプなのだからそんなに嫌ならばいっそ税理士さんに頼めばいいのにと思うけれど、何故かそれは頑として「嫌だ」と言い続けているのだった。
「どうして? 確かに結構お金はかかるけれど、でもキミはそれを払える収入があるだろう」 「それでもヤ!」
眉間に皺を寄せながら、まだ領収書の分類をしている進藤は、ぱっと顔を上げるとぼくを見た。
「そうしたらこうやっておまえに手伝って貰えなくなるじゃん!」
それだけが楽しみでこの苦しさに耐えているのに、どうして税理士のおっちゃんと顔つき合せてやんなくちゃいけないんだよと、おれの楽しみを奪うなとまで言い切られ、ぼくは怒るべきなのだろうけれど、可笑しくて笑ってしまったのだった。
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確定申告記念SS。いや、嘘です。冗談です。でもきっとヒカルは確定申告嫌いだろうなあ。そもそもちゃんと領収書を取っておいているかもわからないし。 でもアキラも実は手伝ってやるのが嬉しいので強く税理士さんを勧めることはありません。
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