「今日は進藤を誘わない」

昨日も一昨日も碁会所に誘ってしまったし、その前の休日には家にも呼んで打ってしまった。だから今日は誘わないのだと心を決めて行ったのに棋院の前でかち合った途端に決心が崩れた。


「あ、おはよう」
「おはよう…」
「なあおまえ今日夜はヒマ？」
「うん」
「だったら手合いの後、検討抜きにしておれんち来ない？」


珍しく両親居ないんだよ、明日もオフでゆっくり打てるからさと誘われて即座に頷いていた。


「行く、行くよ」


ああ…もう。

一瞬後に正気に戻ったけれどもう遅い。進藤は機嫌良く鼻歌を歌いながら和谷くん達の方に歩いて行ってしまった。


『好きな相手を振り向かせる方法？』

それはわざと冷たくしたり、会わなかったりして向こうに追いかけさせることだなと、先日緒方さんに教わった。

『間違ってもこっちから会いたいというそぶりを見せたり誘ったりしてはダメだ』

だから一生懸命誘わないようにしていると言うのに、進藤を見るとつい声をかけてしまう。


「おい何やってんだよ、手合い始まっちゃうぜ？」


下足箱の前で呆然としているぼくを振り返り、進藤が言った。「今日は後の予定があるんだからいつまでも手間取らずにさっさと勝負つけちゃえよ」

「わかってるよ！」

つい怒鳴り返して赤面する。
ああダメだ、本当は今だって断れば良かったのに…。

進藤に会いたくてたまらなくて、一緒に居たいという誘惑に勝てないぼくはこうして毎日決心をしながら敗北を繰り返してしまっているのだった。

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４４４４４番を踏んでくださったＲＩＯさんキリリク「誘惑」の三つ目。


「素っ気なくして振り向かせる」のやり方はヒカルに対しては効果があるのか疑問です。未満の時だと「あーあいつ忙しいんだなあ」とか単純に思ってそのままになってしまいそうな気が（−−；

それ以前にじりじりして学校まで押しかけて行っちゃうようなアキラにはこういう駆け引きは出来ないのでは無いかと思います（笑）