| 2007年01月20日(土) |
(SS)美津子の独り言3 |
塔矢くんは可愛い。聡明で良く気がつくし、女の自分から見てもとても綺麗な顔立ちをしていると思う。
そこらのちゃらちゃらした女の子よりも百倍も千倍も良い、そう一度は納得したものの時間が経つとまた少し心が揺らいできた。
いくら可愛くたって性格が良くたって男は男。男同士の結婚というのは、やはり今時のこの世の中でも普通では無いのではないだろうか。
「…鳥取の叔父さん……きっと驚くわよねぇ」
いざ結婚となると親類縁者に知らせないわけにもいかなくなる。
「佐賀の叔母さんも福島の従妹の照ちゃんもみんなきっと驚くわよね」
よりにもよって男の嫁など聞いたことが無いと何を考えているのだと罵られること必須だと思う。
「やっぱり……ご近所にだって体裁が悪いし」
この間はマシだと思ったけれど、やっぱり夜神さんの月くんの方が相手が女の子だし良かったかもしれないとそう思い始めた頃だった、思いがけずその夜神さんから電話がかかって来たのだった。
『こんにちは、進藤さん』 「あら、こんにちは。この間はどうも」
差し障りない挨拶から始まり、それから話は思いがけない方向に進んだ。
『あの…実はちょっと相談に乗って欲しくて』 「なに? 私で力になれることだったら」 『実は息子の…月のことなんだけど』
この間遊びに行った時にちらりと姿を見た、海砂さんというお嬢さんと月くんが別れたということなのだ。
「あら、それは…」
良かったわねという言葉をかろうじてかみ殺す。
『それで…新しい恋人を連れてきて結婚したいって言うんだけど』
その相手が男なのだと夜神さんの声は限りなく苦い。
『今時、そういうこともあるって言うのは知っていたけれど、主人の立場もあるでしょう?』 「ああ……ご主人は警察にお勤めでしたっけ」 『硬い仕事だから、息子が同性愛者だって言うのはマズイんじゃないかって』 「でも家庭の問題は仕事には無関係だし」 『でも主人の立場が悪くなるんじゃないかって私、心配なの』
それに相手の男性もかなり癖があるらしく、祝福してやるべきなのかどうか迷っているという。
『お噂に聞いたんだけれど、進藤さんのヒカルくんも恋人が男の方だって…だから色々ご意見を伺いたくて』
とにかくぜひ一度家に来て相手を見て欲しいと言われ、動揺しつつ夜神家を訪ねた。
「……で、どんな方なの?」 「同い年で、大学で入試の成績が月と一緒でトップだったんですって」 「あら、じゃあ頭が良い方なのね」 「ええ、とても頭が良いみたい。実を言うと主人の仕事にも関わりがあるのよ」
どうやらその明晰な頭脳で警察の捜査などに協力しているらしい。
「すごいじゃないの」 「ええ…すごいはすごいんだけど」
それでもちょっと癖があってと、そこまで口を濁すというのはどういう人なんだろうかと興味が沸いた。
「二人はずっとライバル同士で、それがいつの間にか恋愛感情になってしまったらしくて」
どこぞの誰か達に似ているなと思わず苦笑してしまった。
「話も合っているみたいだし、悪い方では無いんだけど…」 「やっぱり世間体とか気になりますものね」 「ええ、どうして女の子を選んでくれなかったんだろうって、どうしても思ってしまって」 「わかる、わかるわそれ」
つい気持ちがよくわかって夜神さんの手を握ってしまった。
「本人達の意志が何よりだけど、でもどうせならごく普通にどこかのお嬢さんとご縁を結んで欲しかったって」 「そう、そうなのよ、うちのヒカルだって相手の塔矢さんはとっても良い子なんだけど、それでも男の方でしょう? 近所の目とかどうしても気になっ て」 「わかる、わかるわ進藤さんっ。親類にもなんて言われるかともう胃が痛くて…」
こんなこと他の方にはとても打ち明けられなくてと涙目で言われて自分も思わず目頭が熱くなった。
「こんなことでこういうふうに言うのもなんだけど、私、夜神さんが居てくださって良かったわ」 「私も、進藤さんが居てくださって本当に良かった」
これからも慰め合って生きて行きましょうと話している時に玄関で気配がした。
「……あら、月が帰って来たみたい」
きっと相手の方も一緒よと言われて思わず背筋が伸びた。
あの成績優秀な月くんが選んだお相手はどんな人なんだろうかと、無意識に塔矢くんの顔を思い浮かべつつドアが開くのを待った。
「あ、母のお友達の方ですよね。こんばんは」 「こんばんは月くん、お邪魔しています。お元気そうね」
さあ来るぞ来るぞ、どんな男の子なの――――――?
にっこりと愛想良く頭を下げた月くんの後ろ、ひょっこりと顔を覗かせた相手の姿を見てしばし絶句してしまった。
「あ、彼はぼくの婚約者の竜崎です」
うながされて頭を下げる竜崎さんという方を見てそれまで色々と考えていた全てのことが吹っ飛んで一つの言葉だけが頭に浮かんだ。
……
……………
…………………
勝った!!!!
なんとなく無意識に塔矢くんのような線の細い綺麗な人を期待してしまったのだと思う。
ヒカルでさえ連れて来たのが塔矢くんなのだから、月くんのように容姿に恵まれた人が連れてくる恋人は更に格段に綺麗な人だろうとそう無意識下で思ってしまっていたようなのだ。
「………こんばんは」
ぼそっと言って頭を下げる。 二人が消えた後、しばらく夜神さんも自分も何も言えなかった。
「ね?……癖の強い人でしょう?」
癖が強いって言うより、あの人はなんなの?
そもそも
人間なのー??????
そう心の中では叫びながら、あまりにも失礼なので口には出さなかった。
「で、でも、とても仲良さそう」 「そうなの、仲はとても良いのよ」 「だ………だったらいいんじゃないかしら」
やっぱり本人達の幸せが一番だものねと、なんとなく上滑りする言葉で受け答えしながらそそくさと帰り支度をする。
「わ、私そろそろお夕飯の仕度があるから帰らないと」 「そう? 御免なさいね愚痴ばかり聞かせてしまって」
でもこれからも出来たら相談に乗って欲しいと言われて「いいわよ」と答えた。
「本当に進藤さん、これからもよろしくお願いしますね」 「ええ、本当にお互い苦労は多いかもしれないけれどがんばりましょうね」
そう言い合いながら別れて、でも帰り道ずっと心の中で叫び続けていた。
良かった!
ヒカルが選んだの塔矢くんで良かった!
だって塔矢くんは男の子だけど、美人で可愛くて頭も良くて気だてが良くて、なによりもなによりも
人間だもの!!!
違うのよ夜神さん、夜神さんとウチは違うのよーーーーーーーー!!!
もうホモでもなんでもくそくらえ、下手に反対して竜崎さんのような男の人を連れて来られるくらいなら一刻も早く塔矢くんと結婚してもらわなくちゃと、帰ったら早速式場の空きを問い合わせてみようと思いながら高笑いがもれてしまい、押さえるのに非道く苦労したのだった。
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ホーホホホホ、同じホモでもうちの塔矢くんは竜崎さんなんかよりずっと綺麗で可愛くて、純粋で可憐でとっても良い子なのよ〜〜〜〜〜♪ ヒカルはさすがに目が肥えているわ〜〜♪(美津子スキップ)
という感じで………………………すみません。こんなもん書いておいてなんですが、私はLが大好きです。
なんて言うか……うちに一人いたらいいなあって感じでとってもかわいいと思います。
脳内ホモ三兄弟の自分がもし母だったとしたら長男の嫁には若島津さん、次男の嫁にはアキラをそして三男の嫁にLを貰いたいくらいです。
なんのフォローにもなってはいませんが、もし不快になられた方がいらっしゃいましたらごめんなさい(土下座)
でも、でも、繰り返しますが私、Lが大好きなんです〜〜(汗)
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