SS‐DIARY

2007年01月18日(木) (SS)百年プリント



知り合った先輩棋士が、飲んだ話の合間にセックスレスだという話をした。


「いや…だって女なんか可愛いの最初の内だけだし、毎日見てれば見飽きるし」

もう女って言う気がしないんだよねと、相手も同様らしくこの半年余り寝室も別でそういう行為に至ったことが無いという話にかなり驚いた。


「へえーそうなんデスか。おれなんか絶対無理だなあ、好きな相手だったら一日に三回くらいヤッたってまだ全然足りないけど」

「それは進藤くんが若いからでしょ。年とって来るとすること自体も面倒臭くなってくるしね」


皮膚のたるんだ女房の体見ても欲情のよの字もおこらないよと、言うのを聞いて更に驚いた。


「えー? 松山さん何で? おれ、十年たっても二十年たっても全然気持ち変らないと思うけどなあ」


年を取るのは当たり前だし、老いたとしても気持ちはかわらない。

皺が寄ってもどう変ってもその都度その都度可愛く見えるはずだし、きっと自分には美しく見えるはずだと言ったら一笑に付された。


「だからね、進藤くんはまだ若くて結婚もしてないからだよ」


おれだってまあ、女優や逆に援交の女子高生にだったら幾らでも勃つし、優しくもなるけれどねと、そのうち君にもわかるよと言われて心の中でわかんねーよとつぶやいた。

だって、おれはもう何年もずっと塔矢を見ている。

子どもだった頃のあどけなさの残る顔も可愛かったけど、十五、六歳の少し大人びた顔も綺麗だと思った。

そして二十歳前後のすっかりと大人びた顔も美しいと思い、今、三十半ばになった落ち着きのある顔もとても可愛いと思う。

きっとこの先あいつがどんなに変ってもこの気持ちは変らないと思う。

皺が寄っても太っても禿げても、非道い怪我を負って今の顔形と変ってしまっても、今抱いている気持ちは変らない。

もっともっと好きになるだろうとそう思える。


それも目の前に居るこの人に言わせれば人生経験が足らない故と言われてしまうのだろうけれど、それでもほとんど確信のように気持ちは変らないとそう思える。


「まあ、後10年たったらその時の意見を聞かせてよ」


アルコール臭い息でそう言われて苦笑しつつ答える。


「わかりました。なんだったら五十年後でもいいですよ」


きっとその時もおれは塔矢を変らずに愛してる。


綺麗で可愛くて大好きだと惚気られる。


毎日でも抱いていたくて、顔を見るだけで勃って、とんだエロジジイだと呆れられているだろう。


それでも―――。


それでもきっと塔矢は、そんなおれを嫌だとは言わないだろうと、これもまた確信のようにそう思えるのだった。

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某新聞の人生相談を読んで、いささかむかっと来て思いついた話。

その内容とは↑ちょっとズレていますが、まあヒカルだったらアキラが大好きで仕方なくて、死んでもあんなこと言わないんだろうなあと思ったから。

ねえ、ヒカルは言わないですよね?Tさん。(と、ここ見てないか 笑)


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