SS‐DIARY

2004年10月28日(木) (SS)最近は塔矢も見ているらしいトリ…

これは絶対何か言ってくるなと思ったら、進藤はいきなりくるりとこちらを向いて言った。

「なあ、最高の口説き文句って言ったらさぁ」

やっぱあれじゃんと、人が口をふさぐ前につるりと言う。

「いつだったか、ガッコに押しかけてきておまえが言ったアレ、あの『キミはぼくと戦うために―』」

最後まで聞いていられなくて、後ろ頭を殴ったら、痛ーっ、なにすんだよと進藤は口をとがらせた。

「なんだよう、アレおれの心の『大事なもん入れ』にちゃんとしまってあんだからな」
「そんなもの仕舞わなくていいっ!」
「えー?でもおれアレも好きだったけどな。囲碁をやめないって報告に行った時のおまえの一言、『追って来い』あれってほとんどプロポーズ…」

こんなにばこばこと殴っていては脳細胞が随分死滅するのではないかと思うが、この脳天気男に喋らせておいたらこっちの方が恥ずかしさのあまり悶死してしまう。

「なんだよさっきから。おれ、おまえ語録作って時々思い出したりしてるのに」
「ぼく…語録?」
「そ、小学生の時のかわいーいおまえの『悔しいよ、なぜ対局者がぼくじゃないんだろう』から北斗杯の時のさぁ「無様な―」
「進藤っ!」

放っておくとずらずらと人が忘れたいと思っている言葉を思い出話と一緒に語り始めそうだったので今までの比ではなく強烈に殴って喋りを止めた。

痛かったのだろう、いてーっと叫んで頭をさするのにじろりと冷たい一瞥を与える。

「いいか?もし今後一度でも昔ぼくが言った言葉を口に出したりしたら別れるぞ」
「えー?」
「えーじゃない!それは確かにぼくは出逢った最初の時からキミのことしか見て来なかったけど、だからって」
「うんうん、出逢った最初からおれのことしか見てこなかったと」

ぶつぶつと口の中で繰り返されてぎょっとする。

「さんきゅ。これでおれの愛のメモリーまた一個増えたから♪」

最上級のいい笑顔で言われてもう何も言う気力が無くなってしまった。

「キミ語録を作ってやる…」

この恥ずかしさに耐えるためには相手にも同じだけダメージを与えなければとてもではないが立ち直れない。けれど…。

「えー?いいよ♪作って作って♪」

進藤は堪えた様子もなく、むしろ更に上機嫌になっているので、この戦いにぼくが勝つことはたぶんきっと永遠にないのかもしれない。

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性懲りもなくまたトリビアネタです。
ヒカルはアキラの言った一言一言を全部大事に覚えていそうです。それでもってそんなバカなことはしないと言いつつ、アキラの方も出逢った頃からのヒカルの言葉を大切に覚えていそうです。



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