| 2004年10月21日(木) |
(SS)愛の棘・胸の痛み |
「おまえのそういう所が大嫌い」
打たれた頬をさすりながら、まったくもって彼らしいことだと思った。
「なんでそういうこと言うの?そういうこと真顔で言えちゃうおまえってすげえ嫌」
祝日、いつものように泊まりに来た彼と昼頃に外に出たら、なんだかまわりは親子連れが多くて、初めて祝日だったということを思い出した。
「なんか、ひよこみたいのがたくさんいるなあ」
元々子どもが好きなタイプの進藤は、両親に手をひかれ、よたよたと歩いている子どもたちをながめながら目を細めて言った。
「なあ、なんかおもちゃみたいでカワイイと思わねぇ」 「おもちゃって言うのはどうかと思うけど、小さいしかわいいよね」
でもぼくはそれ以上の感情は沸き上がらない。
小さくてたよりなくて、かわいいと頭では思うけれど、でもだからどうという感情は起こらないのだ。
心の冷たい人間だとよく自分を思うのだけれど、本当の所、ぼくは子どもというのが嫌いなのかもしれない。
理屈が通じない、手間のかかる不完全な生き物と、でも例えば側にいるのだとしたら対等な生き物で無いとぼくは鬱陶しいと思ってしまうから。
「…ちょうどよかったのかもしれないな」
ついぽつっと胸に沸いた言葉をもらしてしまった。
「ん?なに」 「いや…キミとこういう関係になったのは良かったのかもしれないなと思って」
何が?と更に突っ込んでくるので、嫌がるだろうなと思いつつ思ったことを言ってみた。
「いや、ぼくはかわいいとは思うけど子どもや家庭を欲しいとは思わないみたいなんだ。打つことだけに集中したいし、何かに煩わされるのは嫌だし」
でも少なくともキミとは結婚もしないし、子どもを作ることも無いんだからそれで良かったのかもしれないなと、そう思ったのだと言ったら進藤は思い切り顔をしかめた。
「なんでそういう…」 「だって本当のことだし。でもキミには悪いと思ってるよ。キミは子どもが好きだものね」
本当は、ぼくと出逢わなければ進藤は普通に恋愛をして普通に家庭を持ったんだろう。
客観的に見て、愛情深い性質だから家族を大切にしたに違いない。
「別に子どもなんか…おれ…」 「なんだったらキミ、結婚したっていいんだよ。結婚して子どもを作って普通に家庭をもったらいいんだ」 「なんで?じゃあおまえとのことはどうすんの」 「愛人として時々会ってくれればいいよ」
今だって同じようなものじゃないかと言ったら、思い切り頬を殴られてしまったのだった。
「信じらんねぇ、なんでそういうこと言うのかな」 「だって本当のことだし、本当にそう思っているし」
キミがぼくを好きで居続けてくれるなら。 キミがぼくとの関係を絶たずにいてくれるなら、それでぼくは満足だから。
「日陰者で別にいいよ」 「…なんでそういう…」
そんなつもりは無かったけれどぼくは彼を泣かしてしまったのだった。
「おまえのそういうとこすげえ嫌い。大嫌い。愛人でいいなんて、日影者でいいだなんて、平気でそういうこと言えちゃう所が」 「でもぼくはこういう人間だよ。キミが嫌でもぼくはこうなんだから」
ぼくは嫌だけれどキミがぼくに耐えられないなら別れたっていいのだと、そう言った時、また殴られるかと思ったら。ただ抱きしめられた。
「お願いだからそういうこと言わないで。二度と絶対」
おれおまえしか好きじゃない。だからそんな悲しいことを平気な顔して言わないでと。
泣く彼をかわいそうだと思った。 こんなぼくを好きになって彼はかわいそうだなと。
恋は痛い。
愛は辛い。
痛くても辛くてもぼくは大丈夫だけれど、彼が傷つき泣くのだけが心から辛いとそう思った。
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