SS‐DIARY

2004年10月18日(月) (SS)奈瀬ちゃんの独り言

前々から、進藤は女がいるんじゃないかと思ってたのよね。

あれで結構女受けする顔だし、背もあるし、碁の方も若手の中じゃぴか2だし(ぴか1は塔矢)北斗杯に出てから囲碁関係以外の雑誌の取材なんかも受けるようになったから、結構ファンってヤツもついてるみたいだし。

なのに本人に聞いても、「女なんかいねーよ」の一言で、実際に誰かと歩いてる所すら見たことが無い。

一度飲み会した時にこっそり携帯を見てみたけど、履歴は和谷と塔矢ばっかりでカノジョらしい名前は一つも無かった。


「え?進藤?マジでいないと思うけど?」

一番親しい和谷に聞いてもこうなんだから、本当にいないのかもしれないけど、だーけーどー。


女の勘がいるって言うのよ。絶対恋人か、片思いにしても滅茶滅茶愛しちゃってるようなのが絶対いると思う。


だってあいつ、時々、なんだかすごく―すごく優しい表情をする時があるんだもん。
あれは絶対、好きなコのことを思い出しているんだと思うのよね!






で、いつか絶対相手の顔を拝んでやるわよーと思っていたらなんてことでしょう。千載一遇のチャーンス!

進藤ったら明らかに人待ち顔で、本屋の中で立ち読みなんかしてんの。

それも最初はちょっとえっちっぽい漫画雑誌なんか読んでたんだけど、ちょっと時計見たと思ったら慌てて別のコーナーに移ってさ、何読んでんのかと思ったら囲碁雑誌なの。


白々しいほどいい子ぶってんの。

こーれーはー!決定。もう間違い無し。あいつカノジョを待ってるんだ。

その証拠にほら、雑誌読むふりしながら時々顔上げてまわりちらちら見たりして。


足もそわそわ落ち着かないし、時々、はーっと息吐いたりして。

これが恋でなければなんだって言うの?



進藤あれではっきりと面食いだから、かなりレベルは高いと思うのよね。

高校生かな?

大学生ってのもアリだし、年上もイケるんだったらOLかもしれない。

実際囲碁教室に進藤目当てで来ている人がいることも噂で聞いて知ってるから。

そんなこと思ってたら、進藤がいきなりぴしっと背筋を伸ばした。
そわそわしていた足も落ち着き、それから顔を見た瞬間にわかってしまった。

(その子が来たんだ)

雑誌で隠れてると思っているからか、結構無防備に気持ちが顔に出たんだけど、進藤ったら見てるこっちが恥ずかしくなるくらい、甘ったるい幸せそうな笑みを顔に浮かべたのよ。

どれ?一体どの子?あのストライプのシャツ来た女の子?それともピコフリルのついたWWのワンピース着てさっき入って来た女の子?


「ごめん―待たせた?」
「いや、今来たばっか」

ぼんやりと妄想する耳に、進藤と誰かの話し声が聞こえた。

「本当にごめん。帰りがけに一柳先生に見つかっちゃって」
「あー、あの人話すと長そうだもんな」


楽しそうに笑う。さて相手はどんなオンナよ〜?

見るわよ〜こいつ〜♪


と、鼻息荒く棚の影からのぞいてみたらば。









「…塔矢じゃん」



もう頭にきちゃう、信じられない。

進藤ったらあーんなバカみたいにやけてるからてっきりカノジョだと思ったら、今日の待ち合わせの相手は塔矢だったのよ。


「じゃ、おまえんとこの碁会所行く?」
「でもキミ、おなか空いてるんじゃ」
「んーじゃあなんかメシでも食ってからにしようか」


まったく、あんな顔するのは恋人の前だけにしなさいよね!…ってあいつまだあの顔のまんま。



なに?


塔矢相手なのに、なんであんなに嬉しそうなわけ?
っていうか、進藤と塔矢ってあんなに仲良かったの?












って…手なんかつないじゃってるし。






(いいなぁ)って、違うし!







えーと、なんだな。まだ二人ともガキだってことよね?…ね?


じっと見てる私の前を楽しそうに笑いながら歩いて行ってしまったけど。
それでもってなんであの二人見ていてこんなこと思うのかわからないけど。


わたしも

早く

恋人作ろう。


進藤と塔矢を見ていたら、何故かそんな気持ちになっちゃった。



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奈瀬ちゃんの一人語りです。つーか、ほとんどストーカーのようですな。
私はあかりちゃんをよく話に出しますが、女の子としては奈瀬ちゃんの方が好きです。
番外編の話もよかった。


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