SS‐DIARY

2004年09月28日(火) (SS)小さな幸せ2

普段飲み過ぎるということは無いのに、その日は珍しく酔ってしまった。

珍しい酒が手に入ったと、ちゃんぽんで飲んだのと、それを勧めたのがお世話になった人だったということもあった。

なんとなく断れなくて、杯を重ねていたら、いつのまにか度を超した量になってしまったのだ。


ぼくはどんなに酔ってもそれが顔にほとんど出ないので、その場にいた人たちは気がつかなかったみたいだけれど、帰って部屋に入るなり進藤にはバレた。

「あーっ、もうなんでそんなに飲むんだよおまえ」

べろんべろんじゃんと、抱きかかえるようにされて、途端に張っていた気が緩んでもう立てなくなってしまった。


「一体どんくらい飲んだんだよ」

ぶつぶつと文句を言いながら、進藤はネクタイを解くと、ぼくの服を脱がせにかかった。


「…進藤」
「ん?」
「大好き」


それは本当に酔ったはずみでぽろっと出た言葉で、言った瞬間しまったと思ったのだけれど、進藤は少し驚いたような顔をしただけだった。

「はいはい。ありがとさん」

ぽんぽんと頭を叩かれて、ああ本気にしていないんだとそう思った。


「キミが好きだよ」
「うん」
「愛してる」
「うん、わかった、わかった」


完全に彼はぼくが酩酊しているものと思って、どの言葉も軽く受け流してしまっている。


「ほい、着替え完了。どうせ遅いと思って、布団敷いてあっからもうそのまんま寝ちゃえよ」
「じゃあ、キミも一緒に」

キミも一緒でなければ寝ないと試しに言ってみたら、進藤は一瞬黙って、それからはじかれたように笑った。

「あーっ、もう、なんでおまえ今日はそんなにカワイイの?」

そして普段はそんなことしないのに、ぼくの体を抱きかかえると、そのまま寝室まで運んで行って、そして優しく寝かせてくれた。

「―キミも」
「うん、今電気消してくるから」


軽くついばむようなキスだけをして、SEXはせずに、ただ戯れのように抱き合いながら、ぼくたちはその日一緒に眠ったのだった。


愛してる

愛してる

大好きだよと、布団の中で囁くと進藤は相変わらず本気にはしていなくて、でも幸せそうに笑った。

「うん、ありがと。おれも大好き」




「おはよう」と目が覚めてしまったらきっともう恥ずかしくて言うことは出来ないから―。

酔ったままのふりをして、ぼくは彼に一生分くらいの愛の告白をしたのだった。


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