「少し疲れてしまったから休んでもいいかな」
そう言ってあいつは畳の上に横になった。
「ごめん、まだ片づけも終わっていないのに」
そう言いながら、もうとろとろと寝かかっている。
日曜日、久しぶりに少し遠出して、海に行った。 かなり蒸し暑かったけど、まだ泳ぐというほどでもなかったので、二人でずっと砂浜を歩いた。
サーファーもいたし、家族連れもいたし、犬を連れた夫婦もいた。 部活の途中って感じの集団もいたし、年寄りもいた。
誰もみな楽しそうで、でも誰もみな無関心だったから途中から手をつないでゆっくりと歩いた。
みな平等に平和で みな平等に幸せな午後。
砂で遊ぶのにも飽きたし、土産も買ったしと少し早めに帰っては来たのだけれど、夕飯を作り食べ終えた所であいつは力つきてしまった。
ごめんと、寝転がるのに別に断らなくてもいいのに、こういう所がらしいと思う。
「おれも寝ちゃおうっと」
とりあえず食器を流しまで運んで、でもそこから洗うまでの根性は無かった。
和室に引き返すと、あいつの隣にごろりと寝転がる。 すると気配に気がついたらしい、あいつが薄く目を開けておれを見た。
「キミも…疲れた?」 「ん、さすがにしんどい」
とろりとした目がかわいいなあと思いつつ「腕枕してやろうか?」と言ったら驚いたことにあいつは小さく「うん」と頷いておれにすり寄って来た。
「気持ちいい…」
おれの腕に頭を乗せると、あいつはとろりとした目のままで嬉しそうに笑った。
「キミ…海のにおいがするよ」
海にいるみたいだと。
そしてそのまま、すうと気持ちよさそうに眠ってしまった。
ちゅとキスをした髪からはほんのりと潮の香がして、おまえのが海みたいだと思う。
「…楽しかったな」
ちゅ、ちゅとキスをして、あっという間に過ぎた一日を思う。
すごく、すごく、すごく、すごく楽しかった。 二人行った海は驚くほどに楽しかった。
「また行こうな」と、囁いた言葉にもう返事は帰らなかったけれど。
腕の上、安心しきって眠る顔を見ているだけで嬉しくて胸が痛くなった。
「愛してる」 「大好き」
ちゅともう一度髪にキスをすると、おれもゆっくりと、幸せな眠りへと落ちていったのだった。
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