SS‐DIARY

2004年04月04日(日) (SS)愛はさだめ さだめは死

幸せな気持ちで満たされていなければいけないのに、目が覚めた時、ぼくの胸には悲しみが溢れていた。


隣ではまだ進藤が気持ちよさそうに眠っていて、その顔を見ると愛しさに息が止まりそうになったけれど、それでもぼくは悲しくてたまらなかった。


こんなことをしてはいけなかったのだと、そう思うから。





夕べぼくは彼と寝た。

酔った勢いとかそういうことではなく、意外にも彼の方から告白されて、気が付いたら深いキスをしていた。

キスも初めてなら、いきなり移った行為も初めてで、でもそのどれもが痺れるほどに幸福だった。


だってぼくはずっと彼に言うつもりなど無かったから。

一生言わずに済ませるつもりだった想い。それが思いがけず叶ってしまいぼくは有頂天になった。

「おまえが好き」
「だれよりも愛してる」

囁かれる言葉は夢のようで、ぼくを酔わせた。


けれど、思いもかけない成就は同時にぼくの何かを壊したのだった。


熱に体を貫かれ、思ったことは。


もう二度とこの男を離さないというもの。


誰にも渡したくない。
誰にも指一本触れさせないで、どこか深い場所に隠してしまいたい。


それは自分でたじろぐほどに強い思いで、あまりの強さに自分で空恐ろしくなってしまったほどだった。


ぼくだけを見て
ぼくだけを愛して

一生ぼくのことだけ考えてと、慣れない行為の痛みの中で、譫言のようにぼくは言った。


もう二度とその瞳に他の誰をも映さないでと。
絶対にぼく以外を愛さないでと。

彼は笑いながら「当たり前じゃん」と言ったけれど、果たしてその意味の深さをどれだけ理解していたものか。


ぼくはもう本当に彼を誰にも渡せなくなってしまったというのに。


渡すくらいならぼくは死ぬ。

それとも殺してしまうかもしれない。


強すぎる想いは人を滅ぼす。

誰よりも自由でいるキミが好きなのに、キミの翼を折るのはぼくなのかもしれないと、そう思ったら悲しくてたまらなくなった。

こんなにも愚かでこんなにも心が狭い。


けれど拒絶する強さも無く。



これからもこうして抱かれていくのだと。





ゆっくりと、彼の首を絞める縄を持ちながら、ぼくは―。



ぼくはきっと別れることも出来ないのだろうと、安らかな寝顔をながめながら思い、一人静かに泣いたのだった。


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