| 2003年10月09日(木) |
恋をしただけ、ただそれだけのこと(アキラ) |
キミが好きだと言ったら、進藤は少し驚いた顔をして、それから「嘘だ」と言った。
言うのはかなり決心が言ったので腹が立ち、どうして嘘だなんて言うのだと責めたら「だってそんな嬉しすぎる話、嘘に決まってる」と進藤はぼくの顔を見ないように目を逸らせながら言ったのだった。
「そんなの、本当だったら、おれ嬉しすぎて死ぬ」
死んだら困るけれど、でも本当だよと、少し俯き加減に歩きながら言うと、いきなり進藤は立ち止まって、それからぼくの顎を指で掴んだ。
初めてしたキスのことはもうよく覚えていない。
ただ、ただ切なくて、嬉しいのに悲しいような気持ちがしたことだけ覚えている。 キミが好きだと、本当に好きだと、泣きながら言ったようなそんな気がする。
あれからもうどれくらい月日がたったのかわからないけれど、秋の日、二人で手をつないで広い公園を歩く。
キミのことが好きだよと言うと、進藤はもう「嘘だ」とは言わずに、でもやはりまだ少し照れくさそうに笑いながら、ぼくをぎゅっと抱きしめて、「おれも大好き」と言ったのだった。
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