エンターテイメント日誌

2005年03月26日(土) ちょっと横道へ〜Sideways

本来は「来年のアカデミー賞を占う」の続きを書くべきところだが、良い新作映画を沢山観たのでここでちょっと小休止。

今日は「サイドウェイ」(Sideways)について書こう。筆者の評価はBである。

本作は今年のアカデミー脚色賞を受賞した。オリジナル脚本賞は「エターナル・サンシャイン」が獲って、いわばこれらの部門はインディーズ映画へ与える賞となっている。アカデミー賞はハリウッドの映画人が投票する賞なので、どうしても作品賞や監督賞はメジャー系映画会社の作品に偏りがちになる。だからまあ、シナリオくらいは優れた独立系作品に与えても良いだろうという、お情けというかオスカーの<言い訳>を担う部門となっているのだ。昨年の「ロスト・イン・トランスレーション」だってそうだし、タランティーノの「パルプ・フィクション」や「ユージュアル・サスペクツ」などインディーズ系は演技賞を除けば脚本賞や脚色賞しか狙えない運命なのだ。

アレクサンダー・ペイン監督が筆者の前に鮮烈に登場したのはあの、秀逸なブラック・コメディ「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!」(原題:Election)である。劇場未公開で現在はビデオやDVDで観ることが出来るが、それにしても酷い邦題だなぁ。邦題はトンデモだけれどこの映画でアレクサンダー・ペインはアカデミー脚本賞にノミネートされたし、NY批評家協会賞の脚本賞やインディペンデント・スピリット賞の作品賞・監督賞・脚本賞を受賞している。途轍もなく面白い映画なので未見の方は是非。

「サイドウェイ」を観て「ハイスクール白書」(1999)の頃に比べると、ペインの人間を見つめる眼差しが優しくなったなぁという印象を受けた。ワインのように時を経て熟成したと言うべきか。「ハイスクール白書」の結末は登場人物を突き放すかのような実に苦い終わり方なのだが、「サイドウェイ」の行方には仄かな希望の光が差し込んでいる。

男ふたりのワイナリーを巡る珍道中が可笑しいし、男っていつまで経っても子供だよなぁと微笑ましくなる。ワインの蘊蓄も愉しい。ジョージ・クルーニーがシナリオを読んで落ち目の役者役を熱望したそうだが、無名の役者達で固めたキャスティングが功を奏している気がした。

目を瞠る傑作ではないけれど、ほのぼのとした暖かさが心に残る佳作ではなかろうか。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]