エンターテイメント日誌

2004年05月22日(土) まさみ、まさみ、まさみ!<世界の中心で愛をさけぶ>

セカチュウこと映画「世界の中心で愛をさけぶ」の評価はB。いや、あの腐った韓国映画みたいな臭いメロドラマ(実際「冬のソナタ」の監督が韓国でリメイクすることが決定している)に対する評価はFが分相応である。しかしながら筆者の評価をここまで上昇させたのはヒロインを演じた長澤まさみの輝くばかりの素晴らしさをおいて他ない。

長澤まさみは1987年6月3日生まれ。12歳の時、第5回東宝シンデレラグランプリ受賞。2000年、13歳で「クロスファイア」に出演し映画デビューを果たした。僕はこれを映画館で観たが、まさみのその時の印象はちょっと可愛い女の子くらいのものでしかなかった。その後彼女が出演した「なごり雪」「黄泉がえり」「ロボコン」「阿修羅のごとく」等を観ながら彼女が女優として育っていくのを見守ってきたのだが、そこへこの「世界の中心で愛をさけぶ」の大爆発である!いや〜恐れ入りました。凄い。これは「長澤まさみの、まさみによる、まさみのための映画」だね(断定)。彼女のウエディングドレス姿を見ながら「いつの間に成長して、こんなに奇麗になったんだ…」と娘を嫁にやる父親の心境になったね、いや、本当。白血病が発病し抗ガン剤の副作用で髪の毛が抜け落ちる場面は、彼女自ら志願してスキンヘッドにしたのだが、キネマ旬報のインタビューによると髪を剃る日、まさみは行定勲監督に、一緒に付いていて欲しいと懇願したそうだ。行定監督は鋏が入れられるごとに俯いていく彼女を見つめながら胸が張り裂けそうになり「よし、俺も剃そろう!」と決心したそうだ(結局周囲への影響を考えて思い留まったらしいが)。いやはや、その監督の気持ち、よく理解できる。知らぬ間にまさみはそんな風に男を狂わす女になっていたのだ。映画の無菌室の場面でスキンヘッドになったまさみが頭を撫でながら照れ笑いして、「エヘヘ、こんな頭になっちゃった。」とあの舌っ足らずの台詞回しで言う場面があるのだが、いやぁ、まさみにあんなこといわれた日にゃあ、あなた、白血病でなくても鼻血が思わずドビュ〜っと出ちゃいますがな!彼女の映画女優としての凛とした覚悟をここに見た。恐れ入りました、降参です。

撮影:篠田昇、照明:中村裕樹のコンビが映画屋の気骨を見せた素晴らしい職人技を発揮している。現代の場面は青を基調とした寒々とした画面で、これが過去になるとオレンジなど暖色系主体にいつも夕日が差しているかのような色彩を醸し出しているのである。体育館でまさみがピアノを弾く場面、彼女の白い制服に窓を流れる雨の影が映って、それはもう夢の中にいるような美しさだった。

最近の東宝映画はその大半がHDビデオカメラで撮影したものを、フィルムに変換しているのだが(その方が経費が安く済むのである)、行定監督とそのスタッフは今回あくまでフィルムで撮影することにこだわった。しかもシネマスコープ・サイズである。この熱意、映画への愛が作品をより豊饒にしている。スタッフのがんばりにも心から拍手を送りたい。

実は行定勲さんは「Love Letter」「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」「スワロウテイル」「四月物語」など一連の岩井俊二監督の映画で助監督をしていた。篠田昇や中村裕樹はその岩井組のスタッフである。今回行定さんはこの仕事を引き受け「Love Letter」のような恋愛映画を撮ることで、師匠へ挑戦状を突きつけたかったのではなかろうかという気が僕にはして仕方ない。

え?柴咲コウはどうだったかって?そんな名前の女優、出てたっけ?


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]