エンターテイメント日誌

2004年02月25日(水) ローレライよ、米国を撃て!

福井晴敏の書いた冒険小説<終戦のローレライ>は掛け値なしの大傑作である。吉川英治文学新人賞を受賞し、雑誌「このミステリーがすごい!2004年版」では堂々第2位に輝いたのも当然の出来映えである。これだけ充実した読後感をもたらしてくれる小説には、一生の間でそう何度も巡り逢えるものではない。

福井晴敏は憂国の士である。戦後日本が歩んできた道に一貫して疑念を表明し、今の自衛隊のあり方を嘆く。日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞のトリプル受賞し、「このミステリーがすごい!」では3位に入選した小説<亡国のイージス>の映画化を著者は切望していた。しかし、自衛官のクーデターを描くこの一大冒険小説は政治的配慮から映画化を断念せざるを得ない状況に追い込まれた。そりゃあそうだろう。こんなプロットで映画になったら左翼勢力の猛烈なネガティブ・キャンペーンが展開され、東條英機と東京裁判を描く映画<プライド・運命の瞬間(とき)>をめぐる1998年の騒動の比ではない深刻な事態に発展することは必至である。

そこで福井は今度は映画化を前提に新作を執筆した。それが太平洋戦争を舞台とする<終戦のローレライ>である。福井は最初に原稿用紙200枚ぐらいのプロットを書き、それを元に福井は小説を書き進め、一方の映画<ローレライ>班は同時にシナリオ作りに取りかかったという。

樋口真嗣は平成版ガメラ・シリーズの特技監督を担当し、そのハリウッド映画にも匹敵する完成度の高いVFXで世間の度肝を抜いた。映画監督としては2002年に公開された<ミニモニ。じゃムービー お菓子な大冒険! >で腕慣らしを済ませている。出陣の準備は既に整った。

出演するのは役所広司、妻夫木聡ら。そしてローレライ・システムの鍵を握るミステリアスなヒロインを演じるのは香椎由宇(かしい・ゆう)16歳が大抜擢された。その日本人離れした美貌はここここで拝むことが出来る。正に原作のイメージに相応しい逸材である。

東宝の公式ページにはもうそれを見ただけで興奮を禁じ得ないようなストーリーボードが多数掲載されており、いやがうえにも期待が高まる。

福井晴敏の小説を読んでいると、「嗚呼、この人はアニメ・漫画世代の人だなぁ。」といつも感じさせられる。<亡国のイージス>が漫画<沈黙の艦隊>を彷彿とさせたように、<終戦のローレライ>の設定は一部ガンダムや宇宙戦艦ヤマト、新世紀エヴァンゲリオンそっくりだったりする。また宮崎アニメ<天空の城ラピュタ>を明らかに下敷きにしたと想われる場面まで登場して微笑ましい。

そのアニメ・漫画世代の若者(1968年、東京都生まれ)が創作したローレライが、今まさに荒れ狂う大海原へと出航しようとしている。アメリカを撃つために、そして平和ボケしてアメリカの庇護のもと「戦争反対!」を念仏のように唱えるだけで戦争を回避できると考えている、アホで間抜けな日本人を撃つために。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]