エンターテイメント日誌

2004年02月22日(日) No Day But Today~ミュージカル"RENT"

トニー賞最優秀作品賞とピュリツァー賞に輝く名作ミュージカルRENTの来日公演を観に往った。

RENTは日本人キャストによる98年の日本初演を観ている。これは酷かった。いまは「新選組!」で大活躍中の山本耕二くんが演じたマーク役は良かったんだけれど、その他のキャストは演技の出来ないミュージシャンの寄せ集めで芝居未満の出来だし、おまけにスピーカーの音量は大きすぎるは歌詞は全く聴き取れないはで悲惨な体験をした。それからこの作品はニューヨークのイースト・ヴィレッジが舞台なのだが、日本人だけの単一民族キャストではその雰囲気・作者の意図が全く伝わってこないなぁと痛感した。

今回の来日公演はアメリカからのツアー・カンパニーで、白人と黒人の混成キャストにより初めてそのスピリット、作者であるジョナサン・ラーソンの言いたかったことが心に直接響いてきた。キャストも素晴らしかった。僕はあらかじめブロードウェイ・オリジナルキャストCDを何回も繰り返し聴いて公演に臨んだのだが、CDでロジャー役のアダム・パスカルはこの後ディズニー版ミュージカル「アイーダ」でラダメスに起用されるなど(彼が演じるラダメスを筆者はブロードウェイで幸運にも観ることが出来た!)凄い実力派なので今回のロジャー役はさすがに聴き劣りしたが、その他今回のキャストはオリジナル・キャストと互角の勝負であった。

舞台の初日前夜にジョナサン・ラーソンは35歳の若さで急逝しているのだが、このRENTの主題を一言で表現するとしたら歌詞に登場する言葉、'No Day But Today'に尽きるだろう。過去もない、そして未来もない。今日という日しか存在しない。その今日を精一杯生きるしかないのだという若者たち(エイズ感染者、ドラッグ中毒、バイセクシャル、ホモセクシャルなど様々)の切実な想いこそがこのミュージカルの神髄である。ラーソンの書いた音楽も印象深い名曲揃いである。

実は現在、RENTの映画化権はミラマックスが所有している。「シカゴ」を撮ったロブ・マーシャルは当初、ミラマックスのプロデューサーからRENTの監督をして欲しいと依頼されたそうだ。しかしそれをマーシャルは断り、代替案として「シカゴ」映画化を提案した。マーシャルは元々振付師だが、RENTにはめぼしいダンス場面が皆無なので気が進まなかっただろう。替わって「ドゥ・ザ・ライト・シング」「マルコムX」のスパイク・リー(実は彼の名前がRENTの歌詞の中にも登場する)が映画化に興味を持っているようだが、現在この企画は宙に浮いたままである。ミラマックスは結局劇場公開を断念して、テレビ用に制作しようとしているなどといった情けないニュースまで聞こえてくる始末である。是非RENTは映画館のスクリーンで観たいものである。ミラマックスよ、夢を諦めるないで!今はもう、心からそう祈るのみである。


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雅哉 [MAIL] [HOMEPAGE]