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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2006年06月15日(木) --

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『わたしを愛した狼』

猫やのサポーターさんからのおすすめ。
原題は『Bitten』。 そう、これは人狼に噛まれて狼女になってしまった美女エレナがヒロインの、狼系ロマンス小説。

タイトルの『わたしを愛した狼』ことクレイトン(クレイ)とエレナ、そして彼らが属するジェレミー率いる人狼の「群れ」が、敵対する「はぐれ狼」と決死の戦いを生き抜くストーリー。

エレナの一人称で語られるハードな情況はかなりロマンティック。 三角関係のジレンマや、父と娘のすれ違いなど、さまざまな要素で飽きさせない。 もちろん、彼らが人狼である以上、ホラーやバイオレンスもしっかり付随する。
「狩り」もまた。

この世界には、狼女はエレナしかいない、という設定もなかなかすごい。 すべてにおいて驚異的なほど徹底し、ナイーブなクレイの言動には胸を打たれてしまう。 人狼たちは皆それぞれに才能豊かで、クレイは人類学者、エレナはジャーナリストとして人間界で生きることもできるのだ。

一度は群れと決別し、人間界で恋人と暮らしていたエレナが、 群れへ回帰する過程には、心ゆさぶられる。 結局、理屈ではないのだ。人は自分に似た本質を相手のなかに認めた瞬間、 無意識のうちに感情の橋をかけてしまう。 それがどんなに手強いか、気付くのはずっと後になってからだ。

わたしはふたたび花火を見上げ、目を閉じて願い事をした。
自分の求めているものがわかりますように。(引用)

ほんとうに、それさえわかれば恐いものはない。 あとは求めているものを手に入れるか、あきらめるかなのだから。

ところで、現代人が無神経に付けているいろんな香りのミックスされた匂いは、 エレベーターで一緒になったりしようものなら、さしもの人狼たちも、 しばらく鼻が使い物にならなくなるそうだ(笑)。

本書は作家のデビュー作で、続編も書かれている。 アンジェリーナ・ジョリー主演で映画化されるというから、それも楽しみ。 そこにはきっと、ジェレミーの手になるロマンティック・ホラーな名画も登場するだろう。(マーズ)


『わたしを愛した狼』(上・下)著者:ケリー・アームストロング / 訳:山口 緑 / 出版社:扶桑社ミステリー2006

2004年06月15日(火) 『スコットランドの早春』
2001年06月15日(金) ☆『小説家を見つけたら』

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