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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2005年07月04日(月) --

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『ふしぎな木の実の料理法』

こそあどの森。

この森でもなければ
その森でもない
あの森でもなければ
どの森でもない
こそあどの森 こそあどの森 (引用)

そんな森を想像してみよう。 こそあどの森には、住人たちがいる。 ちょっととがった耳をして、個性的で 他人へのやさしさをしっかり持った住人たちは、 それぞれに好みを形にした家に住んでいる。

とてもシンプルな物語なのだけれど、 人へのやさしさや、人としか共有できない思いが しっかりと根を張っている。 こそあどの森全体に、その力が満ちている。

主人公の内気で気弱で浮世離れした男の子、 スキッパーは、育ての親であるバーバおばさんが 旅先から送ってきてくれた不思議な実、ポアポアの 料理法をたずねて、森じゅうの住人に会う。

本当は、家で本を読んだり星を見たり、好きなだけの 濃さに入れたお茶を飲んでいたりしていたいのに… そう、たったひとりで、長い長い時間を。

私もそういうことに無上の喜びを覚える質なので、 時間を与えられれば、何日でもそうしているだろう。 幸いなことに、そうできる状況ではないから、世の中と 関わって生きていくことができるのだけれど。

スキッパーがつぎつぎに訪ねる住人たちは、 だんだん、スキッパーを変えてゆく。 ひとりだけで暮らすよりも、人との往き来がある暮らし。 誰であれ、たったひとりにしておいてはいけない。 それが人間という種族の(スキッパーたちは人間かどうか わからないけど)、群で暮らす名残なのだろう。

こそあどの森は、どこかナルニアの森にも似た空気を かもし出しているし、スキッパーをはじめとする住人たちは、 どこかホビット庄の人々を想わせる。それが心地よい。

著者による細やかな室内のスケッチは、 この世界をさらに引き寄せ、スキッパーだけでなく、 私たちをも、住人たちに再会したいと想わせてくれる。

次回作では、姿を見ることのなかったバーバおばさんにも 会いたいと想った。 (マーズ)


『ふしぎな木の実の料理法』著・絵:岡田 淳 / 理論社1994

2002年07月04日(木) 「ニューヨークの恋人」(その2)
2001年07月04日(水) 『椰子・椰子』(1)

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