HOME*お天気猫や > 夢の図書館本館 > 夢の図書館新館

夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2005年02月16日(水) --

TOP:夢の図書館新館全ての本

『ノストラダムスと王妃』(上・下)その1

読みおえて2ヶ月たった今も、折々に反芻を繰り返している。 文庫化にあたって『預言者ノストラダムス』 から『ノストラダムスと王妃』に改題されている。

王妃とは、イタリアからフランスへ嫁いだ ある意味悪名高いカトリーヌ・ド・メディシス。 ノストラダムスを保護したことでも知られる。

不実な夫アンリ二世の事故死を予言したノストラダムスと、 急速に親しくなるカトリーヌ。 王妃でありながら王の愛人に権力で及ばず、 イタリアの豪商出身とさげすまれるカトリーヌと 一歩誤れば異端の罪を負うノストラダムスの二人。 どちらをも対等に立たせ、 奸計のテクニック、宮廷生活の裏側、出世の階段を登る男たち、 火花飛ぶ宗教の対峙など、こみいった要素を きわめて上手く突いた歴史小説である。

そして、カトリーヌの人物像。 バーソロミューの虐殺など、決してイメージは良くない はずだが、ここでは権力の座を求めてあえぐ一人の女性として、 優れた「女性どうしのひらめき」ともいえるほどの理解を示している。 人間の感情というものがいかに理不尽で、 他者とのコミュニケーションが、いかに難しく、 同時に、瞬時に愛憎が入れ替わるものか。

その瞬間に何度か、強い光が当てられていることが 作品を特徴づけているのではないだろうか。 人間が一生抱え続ける、子ども時代への深い理解も含めて。

人をあやつるためのテクニックも多々教えてくれるカトリーヌ、 ノストラダムスを「父」とまで呼ぶ姿には、 「そうなって当然」と思わされるものがある。

ノストラダムスも人間的である。 体躯のがっしりした人、というのは意外だったが、 晩年健康を害しながらも 若い妻、幼い子どもたちを抱え、未来に名を残し、 家族に生活の保証を与える方策に心を砕く。 カトリーヌとともに、出世の糸口を求めてあえぐのだ。

ノストラダムスが発見したという運命の法則や かの悪名高き終末予言詩の読み解きについては、 個人的にはとても興味深かった。 しかしそれらは、人間を描いた本書を読むにあたっては、 楽しみのなかのひとつ、といえるだろう。 (マーズ)


「ノストラダムスと王妃」(上・下)藤本ひとみ著 / 集英社文庫2002

2004年02月16日(月) 『坊ちゃんの時代』1-5
2001年02月16日(金) 『サンタをのせたクリスマス電車』

>> 前の本蔵書一覧 (TOP Page)次の本 <<


ご感想をどうぞ。



Myエンピツ追加

管理者:お天気猫や
お天気猫や
夢図書[ブックトーク] メルマガ[Tea Rose Cafe] 季節[ハロウィーン] [クリスマス]

Copyright (C) otenkinekoya 1998-2006 All rights reserved.