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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2004年08月24日(火) --

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『銀のシギ』

傷ついた美しい銀色のシギを隠し味に、 王様や乳母、粉ひきのおかみさん、 そしてあの悪魔が繰り広げるのは、 楽しくもハラハラさせられるコメディ、 二人の姉妹、ポルとドルの物語。

ドルは、金髪に青い目、美しい怠け者。 ポルは、黒髪(たぶん)で、いつまでも知りたがりやの 賢くて勇気のある、男の子みたいな女の子。

ファージョンのなかで、この対照的なふたりは、 ふたりでひとりの女でもあるのだろう。 これはオリジナルではなく、もとのお話は、 『イギリスとアイルランドの昔話』(福音館)にも収録されている 昔話の再話『トム・ティット・トット』。 この愉快な物語には、本来、娘はひとりしか出てこない。 たったひとりの貧しい娘のロマンスと危機脱出を、 ファージョンは、 ピンクとブルーほども違うふたりの娘、ポルとドルに 分け与えたのだった。 ドルは女王に、ポルは女王の妹になる。 後半のポルの活躍には胸がすくが、 母になったドルの姿にも、やはり惹かれる。

そして、原作には出てこない銀のシギと、 不思議な男チャーリー。 脇役でありながら、重要な意味をもたらす登場人物たちが いっそうの奥行きを与えている。

この長編は劇の脚本として書かれたもので、 初演は1948年だという。 ロンドンのどこかの、あの19世紀の香り漂う劇場の空気。 ほんの幼い頃から劇場漬けだった女の子ネリー(エリナーの幼名)は、 作家としては遅咲きだったが、詩人・劇作家としても 活躍していたのだ。 コメディ!なんと多くのコメディを、ファージョン家の 4人の子どもたちは体験するように見てきたことだろう。

困り果てたとき、もしも醜い糸つむぎ小鬼がやってきて、 取引を申し出たら、あなたはどうするだろうか? やっぱり、ドルのように、うかうかと乗ってしまって 1年後に後悔するだろうか。 あなたに、助けてくれるポルがいるのなら別だが。 おなかがすいたとしても、 意味をとりちがえたにしても、 家族のご飯を全部食べてしまっては、やっぱり危ない。 かんしゃく持ちの夫も、やっぱり危ない。 (マーズ)


『銀のシギ』著者:エリナー・ファージョン / 訳:石井桃子 / 出版社:岩波書店1975

2001年08月24日(金) 『古い骨』

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