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夢の図書館新館

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-- 2004年01月16日(金) --

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『ある殺意』

P・D・ジェイムズ、デビュー2作目のミステリは、 シンプルな構成の犯人探し。 本国では1963年に発表されている。

富裕な客を相手にする精神科の診療所を舞台と しているため、医師やスタッフたちの 心理描写にもジェイムズらしい『ねじれひねりむすび』が あるのだが、 なんといっても、今回、ダルグリッシュ本人の ユニークさが醍醐味、と思うのは、私もまた それなりに馬齢を重ねているせいだろうか。 いやまったく。 (がんばってほしいものです、あきらめずに)

ロンドンのスティーン診療所で起きた、殺人事件。 殺されたのは、敵の多い女性事務長。 せっかくの夜をふいにして駆けつける、 アダム・ダルグリッシュ警視。

定石通り、延々とつづく関係者の聴取。 ジェイムズらしく、シンプルな動機と結果の裏に、 後のジェイムズ作品に深く沈殿する特性、 手でふれられそうな心理の火がかいま見える。 じゅうぶんに燃えた炭の奥で高温を発する、 あの赤い火種にも似たもの。

ジェイムズらしいといえば、 診療所にモディリアーニの二流作品がこれみよがしに 飾られている、という描写は、 モディリアーニには悪いけれど、皮肉な話だ。

ダルグリッシュは詩人として数冊の詩集を出版しているが、 そのパーティーに登場する版元の社主の描写も秀逸だった。 この出版社は、パーティーに安いシェリー酒を出せず、 レベルの低い作品を出版することもできないのだという。

彼にとって作家はすべて早熟な子供だった。 (引用)

(マーズ)


『ある殺意』 著者:P・D・ジェイムズ / 訳:青木久惠 / 出版社:ハヤカワ文庫1998

2003年01月16日(木) 『ギルドマ』
2002年01月16日(水) 『いまやろうと思ってたのに・・・』
2001年01月16日(火) ☆ 身の回り整理術

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