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夢の図書館新館

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-- 2003年11月26日(水) --

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『なぞの娘キャロライン』

1976年にアメリカで出版された、 子どもたちが主人公のミステリ。 『私』、ウィンストン・エリオット・カーマイケルの家族に、 ある木曜日、人生を変える事件が起こる。 17年前に誘拐された娘、キャロラインが帰ってきたのだ。

ピッツバーグの資産家を舞台に、カニグズバーグの 怜悧に練り上げられたプロットが離陸する。 母親はすでに亡く、彼女の遺産を受け継ぐ期限を目前にした キャロラインの帰宅。 「彼女は本物なのか?」 疑問は家族を覆うが、父は娘をかばう。 (原題『Father's arcane daughter』、父の秘密の娘)

そして、父と後妻との間に生まれた長男の 『私』と、障害のある妹、ハイジは、彼女と関わることで、 後戻りすることのできないスイッチが入ったのだった。

ストーリーは、ウィンストンの回想する少年時代。 1950年代、第二次大戦後すぐといっていい時代の物語だ。 大人になったウィンストンが、 キャロラインと出会ったのは、23年も前のことになる。

『なぞの娘キャロライン』が、なぞを追求する一般ミステリと ジャンルづけされない理由があるとすれば、 プロットよりもなお人間性をゆさぶる、 キャロラインの行為によってうまれた救出劇の リアルさだろう。

カニグズバーグの矢は、 誘拐された娘と家族の悲劇にではなく、 どこにでも起こりうる家族の悲劇を射た。 誰かを罰するためではなく、ただ救い出すために。

主人公の友人ジェニファの秘密を最後に明かした 『魔女ジェニファとわたし』もそうだが、 章のイントロに挿入されるウィンストンの話す相手が誰なのかは、 終幕まぎわまで明らかにされない。 映像ではなく、文章表現ならではのトリック。

「I」(私)とは、かけがえのない、 そして変化する可能性を秘めた言葉である。 (マーズ)


『なぞの娘キャロライン』 著者:E・L・カニグズバーグ / 訳:小島希里 / 出版社:岩波少年文庫1990

2002年11月26日(火) 『狐罠』
2001年11月26日(月) 『黒猫』
2000年11月26日(日) 『Spells for Sweet Revenge』

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