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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年09月02日(火) --

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『少女スタイル手帖』&『昭和のおかず』

☆昭和を思う。

中村草田男の「降る雪や明治は遠くになりにけり」 ではないけれど。昭和もすっかり遠くなった。 唐突だが、しみじみと、昭和が懐かしくなってしまった。

『少女スタイル手帖』と『昭和のおかず』というのは、 ちょっと変な取り合わせだが、共通項は、 どちらも、昭和を切り取った本なのだ。 『少女スタイル手帖』は昭和の少女のあこがれを。 そして、『昭和のおかず』は、もちろん、昭和の食卓を。 今は平成15年。 ああ。若いつもりでいても、私は 昭和の人間なのだ。 そんなことを、しんみりと感じされられた。

『少女スタイル手帖』には、 私の少女の頃の日常がぎっしりとつまっている。 お人形から文房具、おべんとうばこからふとんまで。 あの頃、どうしても欲しかった物から、 当時でも絶対に欲しくなかった物、 どこの家にも当然のようにあった品々まで、 丸ごと一冊、昭和の少女たちの宝物を納めた、スクラップブックである。 子どもの頃持っていた(と言ってもまだ、物置にあるのだが)ベビーダンスが あれば、写真を見ただけで、ぽかぽかした太陽の匂いを思い出した オレンジ色の子供用の敷き布団も。(微妙には違うけれど、当時流行していた というバンビ風の子鹿の柄で、色といい模様といい、ほぼ同じ物の写真が 載っていて、驚いた。) “少女の思い出大百科”と、コピーがついているけれど、 どのページを開いても、恐ろしいくらい見覚えのある物ばかりだ。 まるで自分の思い出のアルバムのように、少女期のパーソナルな思い出が、 ぎゅう、ぎゅう、と詰まっている。 けれども、悲しいことに、思い出の中ですら、 あの頃はもう、セピア色に退色してしまった。 それでも、ページをめくると、 突然に、遠く過ぎ去ったはずの胸の痛みがリアルにぶり返したりする。 何でもなかったこと、ごくごく普通の一日が 急に意味を持って思い出されたり。 ついつい、センチメンタルな気持ちに浸ってしまうのだった。

そして。 今でも、我が家では、昭和が続いていた。 我が家の食卓。 まるっきり、『昭和のおかず』のままである。 懐かしむまでもなく、私は「昭和」の空間の中で生きているのだ。 『昭和のおかず』のレシピの中で、今でもうちの定番は、 ・かぼちゃの直かつお煮 ・ぶどう豆 ・五目豆 ・いかのいため煮 ・ひじきと油揚げのいため煮 ・きゅうりの酢の物 e.t.c. 多少の細部の違いはあっても、あげればきりがないくらい、 うちは昭和の食卓であった。

いろんなことがあった。 子どもの頃から今日までを振り返ると、 当然、いろんなことがあった。 子ども時代だって、決して楽なことばかりではなかった。 けれど、私にとって、昭和というか、子どもの頃というのは、 日だまりの布団の匂いなのだ。 子どもながらに、つらいことだっていっぱいあったが、 清潔で、健康な太陽のぬくもり、 ほんとうに匂いつきで思い出された。 きっぱりと、それが、私の昭和。 そして、もちろん。 昭和の食卓に、異存はない。

思いもよらず、この二冊は、 日常の中の、ささやかなしあわせをほのかに呼び起こしてくれた。 (シィアル)


『少女スタイル手帖』 著者:宇山あゆみ / 出版社:河出書房新社2002
『きょうの料理が伝えてきた昭和のおかず (別冊NHKきょうの料理)』 編纂:NHK出版 / 出版社:日本放送出版協会2002

2002年09月02日(月) ☆本に追われている。

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