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夢の図書館新館

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-- 2003年08月25日(月) --

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『ゴーメンガースト』実写ドラマ版

「映像化不可能」と言われた膨大なるイメージの集積『ゴーメンガースト』を、ついに天下のBBCが1999年に実写映像化してしまいました。 制作期間5年、1時間のTVシリーズ四話分です。

映像化が難しいとは言っても、ゴーメンガーストには超常的な存在や 異世界は登場せず、基本的には私達の世界を構成しているものと 同じ物質で成り立っているので、「不可能」とまでは言えません。 ただ千年を超える歴史と文化と富を感じさせ、 その配置が完璧で独特な美を構成している映像などは、 よほどの予算とスタッフでなければ作れませんし、 ピークの文章はクローズアップから遠景まで完全にフォーカスが合っていて、 しかも鮮明な高速度撮影。 そんなレンズを持つ機材も存在しないでしょう。

と、いう訳で、TV版ゴーメンガーストは支那風のカラフルな建物で 個性的ですが、原作の闇を抱いた巨大な石の城の質感とはかなり感じが違っています。 しかしながらそこは書き割り一つなくともその場を嵐の荒野や魔法の島に 変えてしまう「演劇」の伝統王国、演技に関しては超一流。 英国の人々が、半世紀の間愛した物語の登場人物をどのように表現するのか、それが見物です。

というわけで。ブラボー!役者さん達のなりきり方が素晴らしい! もともと原作には著者の手になる人物スケッチが付いていますし、 文章でも並外れて詳細に人物の外見と内面の心理描写がなされているので 役作りの手がかりは多いのですが、それだけに完成されている キャラクターイメージを崩さないのは大変でしょう。 この通りの人物を作ろう!というスタッフ一丸の熱意が伝わってきます。

衣装も細部まで完璧。 姫の野暮ったくて可愛い深紅のドレス姿、 乳母やのよそいき帽子のガラスの葡萄、 若者の一分の隙もない洒落たお仕着せに仕込み杖、 オペラ「トゥーランドット」を思わせるエキゾチックなオリジナル衣装、 豪華で古ぼけてて凝っていて、見事です。 演劇調の台詞回しも秀逸。 機知が行き過ぎて漫談芸になってしまっている医師、 恐ろしい程のタイミングで掛け合う双子の老嬢、 悲愴感極まる伯爵の声。 ぜひ字幕版で、声の演技と端的で微妙な表現をお楽しみ下さい。

キャストも凄くて、忠僕フレイを演じるのは生前のピーク氏に お会いした事もあるという、かのクリストファー・リー! うわあ、あの威厳ある「伯爵」が、こっちでは伯爵の従者になってる! 蜜の言葉を操る美声の「白の魔術師」が、ぶつ切りの単語で喋っている! 格好良すぎるぞ忠義者! しかしなんと言っても最高のキャスティングは、物語の実質上の 主人公であるスティアパイクを演じるジョナサン・リース・マイヤーズ。 瞳の色以外はあらゆる点がかの野心家の若者そのもの。 若僧の芝居がかった振る舞いに地位ある人々が ころころ手玉に取られる様も、実際の演技を見れば納得です。 炎のような驕慢が、ぞっとする程美しい。

TVドラマは陰謀劇部分を主眼に手際良くストーリーを圧縮し、 説得力を増すために「動機」を補強するオリジナルエピソードを加えています。 いずれもなかなかよく考えられた補足や改変で、ドラマ用に 変更された場面も「その手があったか!」と感心させられます。 予算も時間も(それでも5年!)限られているTVドラマでは原作の舞台の 奥行きには遠く及ぶ事は出来ませんが、ことキャラクター先行で物語を 読みたい方は、ドラマのキャストを思い浮かべながら 原作を読んでも楽しめるのではないでしょうか。 実を言うと私も原作を読みかえしたら、何人かはドラマの姿にすり代わっていました。 スタッフとキャストの原作に寄せる愛情が隅々まで感じられる作品です。 (ナルシア)


『ゴーメンガースト』1999年 BBC製作 監督:アンディ・ウィルソン / 出演:ジョナサン・リース・マイヤーズ、クリストファー・リー他

2001年08月25日(土) 『帰還─ゲド戦記4 最後の書』

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