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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2003年04月04日(金) --

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「アースシーの風」(その2)

☆平和をうたう、もうひとつの風。

「アースシーの風」、ストーリーの柱となっているのは、
竜と人、生きることと死ぬこと、そして、
竜と人を含めた登場人物たちの過去、現在、未来。
愛に出会うことと、愛そのものになること。
こちらの風、むこうの風。

グウィンが、今、この時を選んで完結編を出した背景は、
ゲドの妻、テナーの言葉にもあらわれている。

「この世界が大きく変わろうとしているみたい。知っていたものなど
なくなって、なにもかもが新しくなるのかもしれない。」(本文より)

アースシーの世界でも、私達の世界でも、ことは同じように
起こっているらしい。
ゲドの家を訪ねたまじない師のハンノキは、
助けを求める死者の悪夢にとりこまれそうになっている。
竜は人を脅かし始め、人間どうしの争いも始まろうとしている。

『争い』。
お互いを認めず、力を求め、損ね合う愚かさ。
長い空白を経て、王座に座った若き王、
レバンネンにとっても、重いテーマである。
現在の『争い』に満ち満ちた世界を思えば、なお重い。

テナーは登場したときから自分を持った女性だが、
今回も、ゲドがゴントの島で待つのにくらべ、レバンネンと冒険の渦中に
立つことになったテナーの状況の見方、成熟した女性としての
感受性は文学的な趣で、ていねいに描かれている。

不思議な縁で結ばれた母テナーと娘テハヌーは、どうなるのか?
外伝「ドラゴンフライ」で登場したトンボことアイリアンのその後は?
ローク島の魔法使いたちは、この事態にどう対応するのか?

自分に見合った伴侶を見つけて結婚するという、
誰でもが自然に進む道を逡巡するレバンネン王の姿となりゆきも、
テナーとおなじく、彼の少年時代を知る私たちには、
はらはらさせられる。

そして、猫!
「空飛び猫」のシリーズでも知られる猫好きのグウィンが、
灰色の仔猫を登場させて、今回の新しい主人公である
まじない師ハンノキのそばで、彼の悪夢を癒す。
ゲドの手をいきなり噛んだ、きかん気の仔猫。
今までこのシリーズに猫らしい猫は登場しなかったから、
これを機会に、活躍させたのだろうか。

ともあれ。
純粋で堅実で、ゆらがないものなど、ないのかもしれない。
それでも、そうした測れないものが、
グウィンの描く架空の世界の物語のなかに、
根をはって、呼吸している。
すべてのことばと、ことばのあいだに。
私たちが求めるのは、その世界を呼吸することである。
(マーズ)


「アースシーの風」 著者:アーシュラ・K・ル・グウィン / 訳:清水真砂子 / 出版社:岩波書店

2002年04月04日(木) 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
2001年04月04日(水) 『自分の人生がある場所へ』

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