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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年08月06日(火) --

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『亡国のイージス』(その1)

商店街の夜店で、自衛官に声をかけられました。 「自衛隊に入りませんか」(嘘)。 展示してあった海上自衛隊の艦船のパネルを眺めていたら、 「こちらと同型艦が入港しますので、是非見に来て下さい」 と日時と場所を教えてくれたのでした。 その港はうちから一番近い海です。

と、いう訳で、かんかん照りの真夏の日曜日、 出来たばかりでまだ閑散とした印象の近くの港に行きました。 あ、いたいた、護衛艦「はたかぜ」。 すらりとした護衛艦も、近くに立つと大きいですね。

デッキに立って、対空ミサイル単装発射装置の土台などを ぺたぺたと触っていると、案内係の自衛官さんに 質問しているおじさんがいました。 「今、自衛隊の持っている中で一番ハイテクで 一番強力な船はなんですか?」

それは、イージス艦。 ギリシャ神話の闘いの女神アテネの持つ 決して破られぬ楯「イージス」の名を冠した艦。 護衛艦乗りにイージス艦の優れている点を尋ねるのも 気の毒なので、連れが私にこそこそ話しかけます。 「イージスって、レーダーがものすごく良いんだよね?」 そうですね、それに対空ミサイルは垂直発射装置で29基同時装填。 よく映画で見るでしょ、甲板から真上にだだだっとミサイルが出る奴。 「それじゃこの艦は?」 ぺたぺた。 「こいつです。ターターで一発ずつ」 「うわー、、、、」 「でも、普通の護衛艦の中じゃ最強ですよ」

いくら優秀な楯であっても、イージス艦は全国にたった4隻。 それだけじゃ全然国土のカバーは出来ないので、 ばか高価いイージス艦なんてあっても意味ないじゃん、と言われる。 そこで、1999年に出版されて大人気となった軍事アクション小説、 『亡国のイージス』では既存の護衛艦を大改修してミニ・イージス・システムを 搭載、全国をカバーするシステムを構想しました。 その物語に登場する護衛艦「いそかぜ」は 今私がぺたぺた触っている「はたかぜ」の同型艦です。 「護衛艦ってのは?」 「駆逐艦の事です」 「あー、自衛隊だからdestroyerだとヤバい訳ね」 「多分」

舞台はミニ・イージス・システムを搭載した最初の自衛隊護衛艦、 そして小説のタイトルを見ればだいたい内容は想像できますね。 これは海を舞台にした『ダイ・ハード』。 スティーブン・セガールの『沈黙の戦艦』と舞台も設定も似ていますが、 セガールの役は滅茶苦茶強い元シールズなので全然危なげなし。

一方こっちの主役は退役も近い伍長さん、 ベテランの技と人情の厚さで押しまくる庶民派オヤジヒーローです。 ただ、国防をめぐる背景が深刻ですし、人物設定も徹底的なので 重苦しい出だしに辟易して放り出されるかもしれませんが、 実際にはこの小説は「国家」を論じている訳ではなくて、 敵も味方も外野も家族も、突き詰めれば「個人」として動いています。

さあ、人気沸騰した『亡国のイージス』、文庫版が出ました。 暑い真夏に熱い艦に乗りにいこう。(ナルシア)


『亡国のイージス』(上・下) 著者:福井晴敏 / 出版社:講談社文庫

2001年08月06日(月) 『グリーン・ノウの煙突』

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