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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2001年08月06日(月) --

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『グリーン・ノウの煙突』

グリーン・ノウシリーズ第二作。 前作で、グリーン・ノウというホーム、 保護者となるオールドノウ夫人を得た少年トービー。 待ちに待った寄宿学校の春休み、 グリーン・ノウの家で起こる 不思議な出会いと発見の物語。

時間や空間、属する世界を超えて交歓する 子どもたちの相呼ぶ魂。 今回の、過去からの子どもは、 目の見えない少女スーザンと、使用人で黒人の少年ジェイコブ。 ジェイコブは、オールドノウ船長によって奴隷市場から 救われ、スーザンの世話をする役目を与えられる。

前回とちがうのは、今回の子どもたちは、 ただ時間を超えて現代のトービーと出会っていること。 最後には、幸せを得た二人のその後の人生が オールドノウ夫人によって語られる。 それは私たちにとっても、トービーにとっても救いだ。

スーザンとジェイコブには、 未来の少年トービーの来歴を 説明してくれる存在はいないのだが、 きっと二人はいつの日か、当たらずとも遠からずの 結論を得るのだろうと私は思う。

「ウズラおばあちゃん」と親しみを込めて呼ばれている オールドノウ夫人が炉辺で物語る過去のエピソードは 前回以上にリアルで、ボストン夫人とイメージが重なる。 練りあげた構想の確かさを、しっかりと 感じさせる語り部である。

そして。 光あるところに影はある。 スーザンの母マリアと息子セフトンの治らない病。 彼らは家長であるオールドノウ船長の正しさや、 スーザンの純粋さ、向上心を陰で笑いものにし、 ぜいたくやお世辞や世間体を愛している。 児童文学というジャンルは、善や美を描く同じ筆で、 これほどまで愚かさや悪をも描けるのだと いうことを思い知らされる。

もしも、子どもの頃よくそうして遊んだように、 目を閉じてすべてのものを感じようとしてみれば、 この物語のなかでスーザンが感じている 世界の確かさが、きっと大人にもわかると思う。 スーザンのように、 木のぼりをするまでの勇気が もてるとしたならば、その大人は 世界を信じ、愛されている人だ。(マーズ)


『グリーン・ノウの煙突』 著者:L・M・ボストン / 訳:亀井俊介/ 出版社:評論社

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