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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2002年03月19日(火) --

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☆水色の中止令状。

『ウォーターマガジン』が休刊するとネットで 見ていたけれど、いざ、 水色の封筒に入った発行中止のお知らせが来てしまうと ほんとうにそうなってしまったのだと思う一方、 確かに事情に流され、志を曲げては立つ瀬がないだろうとも。

広告を取らずに、いろんな人たちがいろんなスタイルで 書いたものを発表する場をつくろうという雑誌で、 これまでに9号が出ている。

『普段の生活の中で感じたり、見つけた事柄などを題材に』(帯より引用) という内容の、ペーパーバックのような形と質感。 表紙のイラストはこの雑誌の発案者の永井宏さんが ずっと手がけていた(と思うのだが)。

創刊は1999年夏。季刊で、毎回12の作品が掲載された。 私の地元では見かけないのだけど、都会の書店や 雑貨店などには置いてあったりした。

創刊と3号に、私も作品を載せてもらっている。 その後、日々書くものの量が増え、 どうしても完成させたい長いスパンのものがあったりで、 2回しか投稿できなかったが、 いずれもハードボイルドな実録ものであった。

当時私は、それまでいまひとつつかめなかった自分の 先天的なスタイルが、まずもってハードボイルドであることを あらためて認め、悟ったのだと思う。 そしてその対極にあるような弱々しさも、裏に抱えているのだと。 自分がウォーターマガジンをなつかしく思うのは、 そういうことを気づかされたからなのだろう。

ときどき、思いがけないところから、 あれを読んだと言われることがあり、おそらくそういうことが これからもあるような気がする。

ペンネームに迷ったこともなつかしい。 本名で出すのは、なんとなく抵抗もあって、 時間もないのにどうしようかと思い悩み、 マーズ・スプリングフィールドという名前ではどうだろうかと 打診したら、少しあきれられたようだった(笑)。

本にも明記されていたように、誰でも投稿できる、 同人誌のような発表の場だった。 それでも、実際に書店などで売られるのである。 自分の文章を不特定の人に、ただ「読んでもらうため」に 買ってもらうことの重さを、 ていねいな編集の方とやり取りしながらも何度となく考えた。 いつも相手が決まっている仕事の場合とはちがう重さを。

編集の方からそんなことを言われたのではない。 これほど、相手の意思を尊重しながらも、一字一句のこだわりを 共に考えてくださるのが編集さんなのだと、 そういう世界を知らないこちらが一方的に感じたのだ。

そんななかで自分のいいかげんさにも気づいたわけなのだが、 そのとき学んだことを今、もういちどしっかり思い出そうとも しているのだが、 私と同じように、そこに作品をあずけた人たちは プロであるかどうかには関係なく、続けているだろうか。

「そのきっかけ」になれば、とは、何にでも よく言われる言葉だけれど、そういう場所を提供してもらい、 その後の自分の流れのきっかけをつくってくれたのだと 今いる場所で、この令状を手にして、思っているだろう。 (マーズ)


『12 water stories magazine』 / 出版社:サンライト・ラボ

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