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夢の図書館新館

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-- 2002年02月20日(水) --

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『赤毛のアンのレシピ・ノート』

原題は、『モードおばさんのレシピ・ブック』。 『赤毛のアン』の作者として知られるカナダ生まれの作家、 L・M・モンゴメリ(1874-1942)、つまり ルーシー・モード・モンゴメリこと、 『モードおばさん』秘蔵の料理本なのだ。

モンゴメリに関する本は揃えている私でも、これまで 料理本は持っていなかった。 物語に登場するお菓子や料理の想像上のレシピがほとんどで、 この本のように、情熱的料理人であったモンゴメリの 書き残した貴重なレシピを紹介したものでは なかったからだ。 読んでいると、当時、とっておきの料理の レシピを交換することには大きな意義があり、 それ自体すばらしいギフトだったことがわかる。

レシピの一例をあげると…

 ハイランド・スコーン  モック・チキン  アニーおばさんのレモンパイ  ニュームーン・プディング  サバの網焼き、浜辺にて

どうしてこれが、残っていたか。 モンゴメリの息子たちには受け継がれず、 晩年、母親の手作りの味を恋しがっていたという。

別のルートがあったのだ。 これらのレシピは、ずっと活用され、「生きて」いた。 モンゴメリのいとこの女性に伝わり、 さらに孫娘へと伝わったのだが、 このいとこは、『赤毛のアン』の舞台となった グリーン・ゲイブルズに実際暮らした人だったというから、 あれこれ想像の余地があり、奥が深い。 カナダ、オンタリオ州ノーヴァルは、モンゴメリの 夫のマクドナルド牧師が赴任し、息子たちが生れた 土地でもある。 その地に、「クロフォーズ」というレストラン兼パンの店があり、 ここがレシピの持ち主となった孫娘ケリーの属するクロフォード家で、 実際、モンゴメリのフルーツケーキは店の人気商品なのだそうだ。 かなりの数のカナダ人が、それと知らずに、 モンゴメリの残したレシピを味わっているのだという。

これほどまで彼女が料理に熱意をもっていた事実を こうして突きつけられると、感動がわいてくる。 私のつたない料理の腕と、「モードおばさん」に軽蔑されそうな 食べものへの無頓着を割り引いても、 これは一生ものの大切な本になりそうだ。

モンゴメリや親族のスナップ写真も多数掲載され、 家庭でのモンゴメリを描いた伝記としても面白い。 当時の料理方法や暮らしぶりの紹介も充実。 レシピを収集していたモンゴメリの情熱、 モンゴメリをとりまく人間模様、 料理に関連したモンゴメリ自身の言葉などにも、 他で見られなかったものが多い。

3つの楽しいことが、ここにある。 モンゴメリファンとしての楽しみと、 料理の本としての楽しみと、 その両方を味わう楽しみが。

※訳者の奥田さんは、モンゴメリ関連の著作も数多い作家・ライター。 (マーズ)


『赤毛のアンのレシピ・ノート』 編著:イレーン&ケリー・クロフォード / 訳:奥田実紀 / 出版社:東洋書林

2001年02月20日(火) ☆佐々木倫子

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