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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2001年11月23日(金) --

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『世界の名作怪奇館』

それは衝撃の出会いでした。 小学校に上がる頃に買ってもらった一冊の児童書。 多くの作家の作品を一つのテーマで集めた短編アンソロジーでした。 その本を読んだ6歳の春以来、私は その時に打たれた驚きに匹敵するものを求めて 読書を続けてきたと言えるかもしれません。

はじまりは和やかに。
やがて感じる違和感。
次第に高まる緊張。
そして襲い来る破局。

ああ、お話とはこんなに面白いものなのか。 もう一つ。もう一つ。 全部読んでしまった後、同じシリーズを もう一冊買って貰ったのだと思います。 全て「怖い」お話でしたが、 もともとお化けも暗闇も怖くないくせに 怖いお話の大好きな六歳は これまで幼児向けのお話では見た事も無いような お話の巧みさに魅了されてしまったのでした。

それもそのはず。 その児童書に収録されていたお話は全て 選び抜かれた東西きっての幻想短編の古典だったのです。 その後、大人の本を読めるようになってから 私と弟は「どの話が誰の作品か」探しあてるのを 楽しみにしました。 引越する度子供の本や服は処分されたので、 あれほどの愛読書も手元にあったのは僅かの期間でした。 しかし姉弟はいつでも人に話して聞かせてあげられるくらい くっきりと記憶していたので、ちら、と見れば それが探しているお話だとすぐに分るのです。 嬉しい事に、子供向けの本でありながら 原作の表現を大切にして、分りにくい部分以外は ほとんどそのまま原文に近い形で現されていました。 ですから、原作を読んで懐かしい語り口や 忘れかけていた描写に出会うと、 今でもぞくぞくしてしまいます。

地道にこれはと目星をつけた本を読んだり 思いがけない作家の作品集に懐かしい一編をみつけたりして 長い間にだいたいの原作は判明しました。 さてあの優れた作品ばかりを選んだ 「児童書」そのものはどこの何という本だったのでしょう。 便利きわまりないインターネットのお世話になり、 記憶の本を探してみました。 キーワードになるのは原作のタイトルとは異なっていた 各話の子供向けタイトル。 「黒ねこ」「さるの手」「吉備津のかま」等はほぼ同じですが、 「壁の中のアフリカ」(原題は「アフリカ」) 「魔のトンネル」(原題は「信号手」) など、大人の本が引っ掛からないようなタイトルを入れてみます。 検索結果。 『世界の名作怪奇館(講談社)』 ああ、かなりの話がこの中に含まれているし、 タイトルにも覚えがあります。 あれ?でも「ろくろ首」や「ダンウィッチの怪」が入ってない? 読んだ事のない話が入っている? 私が読んだのとはどうも編集や版がかなり変わっているようです。

現在『怪奇館』シリーズも一部の 図書館に残っているだけのようですが、 講談社の『青い鳥文庫』収録分の中に組み合わせを変えて 懐かしいタイトルが並んでいました。 さあ、子供のためのお話に飽き足らぬ 怪奇と幻想を愛する子供達よ。 世界には数々の恐ろしく美しい物語が存在する。 いざその手にこれらの書を‥‥え、嫌? こんな大人になりたくないって?→(ナルシア)


『世界の名作怪奇館』(絶版)『青い鳥文庫・Kシリーズ』 / 出版社:講談社

2000年11月23日(木) 「ナイチンゲールの屍衣」

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