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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2001年06月25日(月) --

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『親子ネズミの冒険』

ゼンマイじかけの父さんネズミと息子のネズミは、 ちょうど「高い高い」をするかのように両手が つながって、向き合ったブリキの人形。

誰かが父さんの背中のネジをまいてくれれば、 同じ動作で動くことができる。 誰もネジをまいてくれなければ、何年でもじっとしている。 自分では動けない彼らが、まるで人間と同じように だいじなものを求めて、運命に挑む。 足りないものを探すという本能を生まれながらに持って。

店に並ぶ多くのおもちゃのひとつである彼らが、 人間に買われて外の世界に出て、 まさに艱難辛苦の末に、ちりぢりぼろぼろになっていた 仲間のおもちゃたちと再会し、 外見はまったく違う母親さえ得て、 旅の途中で出会った動物仲間も一緒に、 「家族と家となわばり」をかたちづくる。

おもちゃや動物を主人公にした 児童文学の形ではあるが、 子どもに読み聞かせようなどとしたら、 涙もろい方は先へ進めなくなるかも。

ネズミの親子や登場人物たちの 何気なく語る言葉や行為の裏と表に、 幾重もの意味が込められ、運命の糸は巧みに織り込まれ、 彼らが次々に体験する風景は、 まさに世界最底辺の巡礼でもある。

そして、私の琴線にふれてやまないのは、 親子のネズミが──親子として作られ、 手がつながっているというだけで この二匹だけが、名前もないこのおもちゃ同士だけが、 生きていくすべての前提として、 互いに相手を親であり子であると 信じ込んでいることなのである。(マーズ)


『親子ネズミの冒険』 著者:ラッセル・ホーバン 訳:乾侑美子/ 出版社:評論社

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