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夢の図書館新館

お天気猫や

-- 2000年11月12日(日) --

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『ハンニバル』 (3)

レクター博士、再登場。 というのも、また、見つけてしまったものだから。 意味ありげな偶然という符号は、 恐ろしくも魅惑に長けた微笑をうかべて、 弱き人間をかくも陥れる。

「オペラ座の怪人」。 ロンドン発のロングランミュージカル。 この舞台は、オークションに続く劇中劇から始まる。 劇中劇が始まると、一人が舞台中央で劇のタイトル名を ぱっと開いて見せる演出。 そこには 「ハンニバル」 と書かれている。 そう、実在のハンニバル将軍の話だ。

ただし、これを見るまでにもハンニバル・レクターを 思い出すにはじゅうぶんな舞台背景だった。 ハリスの「ハンニバル」で、最後近くに出てくる 豪華なオペラ座でのシーン。 かたや「オペラ座の怪人」なのだから、こちらの舞台も その臨場感を出すことに余念がない。 どうしたって、思い出してしまう。

さて、舞台のうえで話は進む。 「怪人」は、仮面と鬘をつけている。 その後ろ頭が、とてもとても「カワウソ」を連想させるのだ。 レクター博士の髪の毛は、カワウソのようにぴったりと 頭に張り付いていたという描写を思い出す。 それに、そう、仮面といえば、レクター博士は逃亡のために 整形手術したのではなかったか。

もうこれは進行性の病気だろうか。 自分でもわけがわからずうろたえる。 しかも、どちらもまごうことなき「怪人」である。

そうなると、ヒロインのクリスティーンと クラリスの名前の相似にもおのずと妄想は飛躍する。 しかし…この二人の関係もそれぞれに、 何かの共通点を見出させてくれる。

結局、この物語が多くの謎を投げかけ、 読者を飽きさせないのは、 ストーリィの劇的な展開と絡んだ罠、 たとえば私がかかった妄想のような、 いくつもの古典、いくつもの出典世界が複合して 織り上げるタペストリーの巧みな輝きにあるのだろう。

…トマス・ハリスはこの有名な小気味よい舞台を 実際に見たのだろうか。 「記憶の宮殿」を漂う哀れな怪人に何を思っただろうか。 それとも、博士らがオペラ座で見ていた演物こそが、 ヘンデルの歌劇「タメルラーノ」ではなくこの…(マーズ)


『ハンニバル』 著者:トマス・ハリス / 出版社:新潮文庫

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