[ 月刊・夢の図書館 ] * 読書特集 & ブックトーク *


☆5月:パワーをくれる女性たち。

ページをめくっていて、すてきな先輩女性に出会えると、現実にそういう女性と知り合うのと同じくらい、うれしくなってしまいます。そういうとき、ページをめくる手がゆっくりになって、彼女たちのメッセージを受けとめようと、胸の扉が開いているのを感じます。

そんな女性たちを、フィクションの本に限って、少しだけご紹介。

たとえば、R・ピルチャー『冬至まで』のエルフリーダ。リタイアした元女優という華やかさもありますが、冒頭でこれからの生活の伴侶となる愛犬を野犬収容所でもらい受ける場面から、彼女の人生に引きこまれてゆきます。そしてエルフリーダの「距離のとり方」には多くを教えられます。

☆春はロマンスの季節? 『冬至まで』(上・下)著者:ロザムンド・ピルチャー / 訳:中村妙子 / 出版社:日向房

L・M・モンゴメリの作品には、数え切れないほど魅力的な先輩女性が登場します。あえて一人をあげるとすれば、『アン・シリーズ』でいつも男性たちをこきおろしているミス・コーネリア。「男のやりそうなことじゃありませんか」が口癖で、ユーモアを相当たしなむ彼女が突然結婚した時は、ずいぶんおどろかされました。 (コーネリアは『アンの夢の家』以降に登場)

『スプーンおばさん』シリーズの主人公、スプーンおばさんも、すごい先輩のひとりだと思います。人間がとつぜん小さくなってしまうというコミカルな物語のなかで、スプーンおばさんの名言が光り、冒険を楽しみながら何でもなさそうにしている姿が印象的です。「どこにでもいそうな」、それでいて自分をしっかり持った先輩です。

『小さなスプーンおばさん』 著者:アルフ・プリョイセン / 訳:大塚勇三 / 出版社:学習研究社

とてもあこがれるけれど、自分にはとうていなれないとわかっているのが、『妖精ディックのたたかい』で重要な役割を果たしているウィディスンのお祖母様。ものごとをわきまえたやさしい人で、人間でないディックの目には近寄りがたいほど「高貴なもやに包まれて見える」お祖母様は、利己的な人にすら愛される(愛されたいと思わせる)不思議な引力の持ち主。

『妖精ディックのたたかい』 著者:キャサリン・M・ブリッグズ / 訳:山内玲子 / 出版社:岩波書店

『レベル21』という不思議な雑貨店のオーナー、アンジュさん。占いをしたり、お客さんの相談に乗ったりしてくれて、やさしいけれど、ちょっと正体不明なところもあります。本のなかでは主人公の少女がアンジュさんと出会って周囲の人びとの思いに気づいてゆくのですが、どこかの街角で、そんな風なお店があなたを待っているかもしれません。

『レベル21』 著者:さとうまきこ / 絵:小澤摩純 / 出版社:理論社

byマーズ(050430)
by お天気猫や
2005年09月04日(日)

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